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遅くない、スタートライン 第3部 第5話10/14更新

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こんなに緊張したステージは初めてだ。全国ツアーの時も緊張したけど、今日のドームツアー初日は自分でもわかるぐらい手が震えている。俺は緊張すると手の震えからくる。それが徐々に全身に緊張感が回ってくるタイプだったが、俺の震える手を2人で握ってくれた。2人…美裕とあっくんだ。ステージ端でうずくまっている俺に合わせて、美裕は膝をついて俺の手を握ってくれた。あっくんも同じようにかがんで、俺の手を握ってくれた。

「パパぁ!がんばぁれ」
「パパ!ファイト!」2人はとびっきりの笑顔を見せてくれた。次の瞬間…俺は立ち上がって!
「よぉっしゃ!行ってくるぞ!美裕・あっくん」右手を突き上げた。
「行ってらっしゃい!パパ」2人の声が聞こえ、後ろでも…
「行ってらっしゃいませ!MASATOさん」ファクトリーマシャのスタッフの声も聞こえた。

俺はステージに出てから、全身全霊で歌った。初めてのドームツアー!またスペシャルゲストに雅樹兄貴と竜生兄貴のサポートがあって、また心を込めて歌った!トークも入れ、本来のお調子者の俺がボケたり、ファンに突っ込んだりして、ドーム内は笑い声が響いたり、また俺も一緒になって笑った。

この初日…俺は14曲とアンコール2曲を歌い、雅樹兄貴と竜生兄貴で3曲歌った!全部で19曲歌った!ドームツアーの計画表より2曲オーバーに30分延長になった。最後の曲が終わって、ステージから下りた時に目が回った。目が回ったと同時に俺は後ろに倒れたが、竜生兄貴がガッツリ受け止めて、そのまま俺を肩に担ぎ医務室に連れて行った。

真理子第2副院長先生はこの時は、俺をカラかいもせず…
「よぉやった!さすがMASATO!!」とケツの注射はせず点滴をしてくれ、頭をなでてくれたそうだ。後で三ちゃんに聞いた。身重の美裕を驚かせてはいけないからと、真理子第2副院長先生のご配慮で点滴が済むまでは、美裕には知らせなかった。終わってから歩けるようになって(途中まで直人と壮太に肩を貸してもらった)自分の足で、楽屋に戻った俺だ。

そんな様子を高茂久院長と真理子第2副院長先生が見ていて、こう言ったそうだ。
「男らしいや!MASATOくん」
「普段お調子者で、小心者だけど。美裕とあっくんの前ではカッコよくいたいんだよね。兄貴達と一緒だ」
雅樹兄貴も竜生兄貴も同意したのか、笑いながら頭をかいた。

美裕とあっくんは、交互で俺の足を揉んでくれた。ステージから下りてきた俺の足は、いつもパンパンで靴やスニーカーが脱げない程になる。
「すっごくカッコよかったよ!パパ」
「うん。みんないっぱいはくしゅしてたぁ!まさとぉ!っていっぱいこえがした」
「ですかぁ…もぉファンの顔をみようと思ったけど、ッハッハ…多すぎて鮮明に見えんかったわ」
美裕は自分のポケットから俺の眼鏡を出した。

「なんで要らないっていうの?預かってたけど」
「あぁ…アンタ俺小心者でしょ?眼鏡かけたらどーなる?」
「あ!心臓が破裂するやないかぁ!ですか?パパ」
その美裕の声に、あっくんは笑った。
「パパ!たいへんだよぉ!とまったら、ママのまほうかけてもらわないと」
「だな!さてぇ…シャワー浴びて帰ろうか」
2人はうんうん…うなづいて俺の腕を引っ張ってくれた。

マサ君ことパパは、自力でVANを下りて自分の足でベッドに入った。ベッドに入るまで三ちゃんが後ろをついて行った。三ちゃんは私にこう言った。

「MASATO!変ったわ!2人のお父さんになるから?美裕さん」
「ですかね?でもムリしてるのわかってるけど、すごく頑張ってくれてます」
「明日の朝刊スゴイよぉ。千尋さんがラインでまた知らせてくれるよ」
「はい!絵文字一杯でラインしてきますわ」
私と三ちゃんは笑った。

翌日のスポーツ新聞の朝刊各紙を買い込んで、千尋さんは興奮気味でラインをしてきた。絵文字も何だか変で、文字の変換もおかしかった。あっくんと2人で…

「これちがうよね?ママ…」
「たぶんね。【あ】と【な】間違った?千尋おばちゃん」
「だよね。パパに見せたら笑うよね」
あっくんは2階のベッドルームを指さした。
「うん。後で見せてあげよう!ま、今日は起きるまで待ってよぉ!あぁ…まだ起きないからさ、ママと坂の下のコープさんに行かない?」
「うん!いくう」あっくんは私に手を伸ばし、私はあっくんの手を借りて立ち上がった。

私とあっくんは近所のコープさんで買い物をし、カフェに寄った。諒君達に陣中見舞いのスナック菓子を渡し、千尋さんが買い込んだスポーツ新聞をあっくんと見ていた。あっくんは、MASATOことパパを嬉しそうに見ていた。ステージの上で手を振りながら歌ってる写真に、お気に入りのキャップを振りながらダンスしたり、色んなMASATOが各スポーツ新聞に載っていた。カフェのテレビでもまた、昨日のドームコンサートの一部が放映されていたり、お昼のバラエティー番組で取り上げられたりしてた。番組のメインキャスターがこうしゃべってたな。

「MASATOさん!7年ぶりに歌手に復帰してドームコンサートすごいですね。またぁ!家庭内でもご自身の再婚に5月に女の子が誕生するようですね。ブログで【もう嫁に出しません】とか書いてるぐらいですからね」
「また…長男君もかわいいですね。何度かブログに登場してるし、コンサートやライブも奥さんと一緒に見に来ていて、これもブログですが、MASATOさんの歌マネやモノマネしてるそうです。それが上手だって!ッププ…MASATOさんも親ばかだぁ。あぁ失礼!ファクトリーマシャはみんな親ばかでした。大黒柱3人組もブラザーズ達も」

その声にスタジオ内の観客から笑いが起こった。

「ぼくのこと?」
「うん。パパがブログで書いてるからね!起きたら襲撃していいよ。ママが許す」
「うん。こむぎとむぎたもいいかな?」
その声に諒君が…笑いだした。
「すっげぇ!あっくん22キロ!」加奈ちゃんまでが…
「こむぎ7キロとむぎた9キロ!はい合計は?千尋さん」

レジで伝票をチェックしていた千尋さんは…
「38キロ!美裕…モアちゃんと一緒にのれば?」
「うーん( 一一)パパの背中が折れちゃうかも」
その声に、キッチンで洗い物をしていた雄介義兄さんが声をだして笑った。

俺は自分のくしゃみで目が覚めた。寒かったか?いや…羽根布団の上に毛布もかぶってるし、あぁ!カフェで俺の悪口言ってるのか?美裕とあっくん!目を開けて時計を見たら午後3時だった。腹減ったぁ!美裕とあっくんはいないのかな?静かだぜ…

俺はそっと起き上がって、ゆっくりゆっくり階段を下りた。そしたら…こむぎ・むぎた姉弟が俺に向かって、【さんぽ!さんぽ!】と後ろ足で立ってしっぽ振って、耳ペタで舌までだしてコールしてた。

はいはい!行きますよ!俺もカフェに行こう!