遅くない、スタートライン 第3部 第5話10/14更新
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あぁ…忙しい!俺の体がもう2個ほどあればどれだけいいか!と思った俺だ。高茂久総合病院の医療見学にドームツアーの準備に、美裕のおなかが段々大きくなってきた。おかげさまで順調で、妊娠7ヶ月後半に入った。1月の中旬からカフェも作家業も産休に入った。また…雅樹兄貴と写真集の出版の仕事をしたが、雅樹兄貴と一緒なら大丈夫だ。あの人は5人のお子さんのお父さんだ(*^^*)今日も、雅樹兄貴のスタジオに車で美裕を送ってきた。雅樹兄貴の妊婦さん対応はバッチシだからぁ( *´艸`)俺は安心して地下のスタジオに下りて行った。美裕は同じビルの地下2階で雅樹兄貴とスタッフで作業をしている。
あぁ…年明けにあっくんを連れて、ジィジ達のところに行った。ジィジの車いすを押してるあっくんを、俺とバァバは見守りながら話をしていた。あっくんの成長の話や、美裕のおなかの赤ちゃんが女の子で、あっくんがとても楽しみにしているということ…俺は思い切ってバァバに聞いた。
「彩華さんから何か連絡はありましたか?」と…バァバの顔は一瞬戸惑いが走ったのを、俺は見逃さなかった。
「……ごめんなさい。雅人さん」バァバは俺に頭を下げた。
「謝らないでください。俺は怒ってませんから…何かあったんですか?」
「えぇ…主人の事もあるからね。一度帰国するように言ったのよ。でも帰ってこなかったから、私達はもう諦めていたの。それが…」
ところが、娘の彩華からバァバに電話があった。ジィジの体の事もあきとの事も何度も電話しても、出なかったり、出ても【もう私は関係ないから】と邪険に電話を切ったこともあったそうだ。それなのに…何で電話をかけてきたんだろう?
「あきとが2歳になる前に、海外に行ってから何年経ってると思ってるの?あきとは9月で5歳になったのよ」
バァバが怒りたい気持ちはよくわかる。でも娘だ…怒りたい気持ちを抑えて電話で話したそうだ。
「でもかけてくるってことは、彩華さん自身に何かあったんですかね?」
「みたいね!あの子はいつもそう…そんな風に育ててしまった私達にも責任があるけどね。それでね…」
海外で再婚生活を送りすぐに子供を授かったが…
国際結婚ってやはり難しいのか、価値観や育った環境が違うしさ。再婚相手とも不仲が生じていたらしい。また子供もいたが、再婚相手の親がでてきて子供の躾や教育に干渉をし、また彩華にも干渉をする義両親で、息が詰まりそうだと言ったそうだ。日本に帰ってきたいと言ったが、そう簡単には行かないだろう?
「2歳前のあきとを手放して、今度もまた自分の子供を手放す気なのかしら?」バァバはため息をついた。
「お義母さん…実は」
俺は年末の模型店で彩華らしい女の人が、あっくんを見ていたことを言った。
「彩華なの?」
「いや…俺は直接見たわけじゃないし、あっくんも気づいてないんで口つぐんでたですけど。うちの美裕も、時々視線を感じるって言うんです。俺は気のせいだろうって言ってますがね」
「あきとに逢いに来たのかしら?」
「どうでしょう…このご時世だから俺の再婚知ってますよね?俺と美裕とあっくんの家族ショットもブログなどに載ってますからね」
「わかるかも知れないわね。雅人さん…どうするの?」
「あっくんが彩華に逢いたいと言えば逢わせますよ。あっくんのママには変わりないですから」
「ありがとう…あきとはあなたと美裕さんがとても可愛がってくれてるのはよくわかるわ」
「あっくんも俺達に懐いてくれて嬉しいし、俺は今…あっくん孝行させてもらってますよ。俺だって彩華の事は言えないもん。1歳のお誕生日後からのあっくんを知らないし」
「もぉ…充分あなたはあきとの心をつかんでるわ。今日もドアを開けて入ってきたあきとは、お洋服も同じでしぐさや雅人さんの口ぶりにもよく似てて思わず笑ってしまったわ。雅人さん…彩華と話をします。もう少し時間をください」とバァバは言った。
バァバはもちろん…ジィジにも相談をするだろう。一人娘なんだ…彩華は!俺も逢うことがあったら、ちゃんとワビるよ。美裕と結婚してから、俺は改めて前結婚生活で取った行動や言動を悪かったと反省したから!美裕も前結婚生活での事…あきら先生に謝りたいと言ってた。ま…俺と美裕はよく言えば似た者同士だな。
あっくんがジィジの車いすを押して、俺達のそばに戻ってきた。
「バァバ!ジィジがのどかわいたって!ボクものどかわいた!」
「あきとは…しゃべりっぱなしじゃないか!それはのどは渇くさ」
ジィジはあっくんの顔を見ながら嬉しそうに話した。
「はいはい…お部屋に戻っておやつにしましょう。美裕さんが焼いてくれたロールケーキとね」
「やったぁ!ママのロールケーキおいしいよ。パパいつも3こたべるんだぁ。ぼくは2こ」
「あっくん!この前は2こと半分食べたやないか!パパは最近2個だ!」
「あぁ…パパ!ドームツアーだからママがダイエットっていってたねぇ」
笑いながら、話したあっくんだ。そんなあっくんを、ジィジとバァバは嬉しそうに見ていた。
あぁ…話を元に戻そう。
美裕は写真集を出すにあたって、この数ケ月で400枚近く撮影していた。あっくん・俺・柴犬姉弟やカフェのスタッフ・千尋さんや雄介義兄さん達も。またこれがいい表情してるんだ!雅樹兄貴に言わせれば…
「写真の中の人物や動物たちが今にも動き出しそうだ。美裕ちゃんの写真は」
樹先生も同じこと言った。
「何か…色彩感が溢れてるんですよね。美裕ちゃんの写真…こむぎとむぎた写真は今にも写真の中から飛び出してきそうな感じだ」
樹先生が言ってる写真は…こむぎとむぎたが後ろ足で立って、美裕を呼んでる写真だ。口も開けて、耳もペターッと寝て、【ママぁ!ごはん!ごはん!】ってこむぎとむぎたは言ってるんだなと!あっくんと俺は写真見て言ったっけ。
美裕はカメラの才能もあったんだな。俺も時々カバー表紙や、挿絵に写真貸してもらうんだ。ちゃんと写真には【mihiro’s】ってロゴ入れてるけどね。
またあっくんは、今日から幼稚舎の遠足で1泊2日で【雪遊び遠足】に行ってていない。ムフッ(*^^*)
今日はこむぎとむぎたもいない。仕事に入る前に、訓練もかねてさ。さくらぎアニマルクリニックにあっくんと同様に【お泊り】訓練に出した。石田先生がお泊りができるようになったら、飼い主さん的にも随分と楽になるから、ぜひ一度はトライしてみてと言った。だから預けた!
美裕の仕事終わったら、どっかで夕飯食って…久しぶりのコブなしデートに俺は胸がワクワクした。
作品名:遅くない、スタートライン 第3部 第5話10/14更新 作家名:楓 美風