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過ぎゆく日々

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「青春とはなんだ」


 今年も、卒業・入学の季節を迎えた。
 
♪空に燃えてるでっかい太陽〜♪
見た記憶のないドラマだが、この歌はなぜか今でも口ずさめる。
 私が見たのは「これが青春だ」だ。もちろん、
♪大きな空に梯子をかけて〜♪
もよく歌っていた。
 
 ドラマの影響だろうか、当時は、高校生に憧れていた。とても大人に見えた。
 そして実際、高校に入学すると、昨日まで中学生だった者にとって、そこは別世界だった。
 小中学校ではただ怖いだけの存在だった先生と、まるで先輩のようにフランクに話ができた。昼休み、給食などない。弁当を持ってこない日は近くのパン屋へ買いに行ったが、近所のラーメン屋はウチの生徒で満席だったようだ。学校帰りは喫茶店でおしゃべり。もちろんお小遣いと相談だから、そう頻繁にとはいかないが。
 体育祭や文化祭も、中学時代とはまったく異質なもので、驚きの連続だった。まず、主体が教師ではなく生徒たちだった。
 流行の曲に合わせて踊るチアガールが応援する体育祭。
 飲食物を提供する店が登場する文化祭。
 祭が主で、文化は二の次のようだが、生徒が決めるのだからそうなるだろう。
 そして、男女交際も、ただ恥ずかしがって交換ノートをするようなものではない。堂々と校内で話し、一緒に下校する。その光景に出くわしても冷やかす者など誰もいない。
 仲間との絆も、この年齢特有の深いものとなり、部活動もそれぞれ本格的な活動に熱気を帯びた。
 
 長い人生の中でも、この時期にしか味わえない密度の濃い多くの経験――それを青春と呼ぶのだろうか。 
 だが、テストがなければまるで天国――と懐かしむのは、遠く過ぎ去った今だからかもしれない。なぜなら、
♪青春時代の真ん中は 胸にとげさすことばかり〜♪

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖