過ぎゆく日々
おひとりさま
昨今、「おひとりさま」が浸透し、様々なサービスが登場しているという。ひとりカラオケ、ひとり焼肉、ひとりキャンプ等々。以前からひとり旅やひとり映画鑑賞などはあったが、今や雑誌で紹介されるほどひとりを満喫する人たちのニーズがあるらしい。
要因の一つはスマホの普及だろうか。人との過剰なつながりから離れ、時にひとりを楽しみたい。あるいは逆に、どこにいてもいつも誰かとつながっていられるという安心感から、ひとりでも寂しくないのかもしれない。
一方、そういう自ら選んだ場合と違い、配偶者に先立たれてひとり暮らしを余儀なくされている多くの高齢者がいる。核家族が主流になった今、子どもたちが成長し巣立てば夫婦が残る。そして、いずれはそのどちらかがまた残されることになる。こうしておひとりさまに、という流れになっていく。
その頃になると若い時とは違い、体はきかなくなるし、いくつかの病も抱えている。語らい慰め合う友だちも順に旅立っていく。だからと言って離れて暮らす子どもたちには彼らの生活があり負担はかけられない。とは言え、どんなにか寂しく心細いことだろう。昼間はともかく夜などは、深い孤独に襲われるかもしれない。
平均寿命を超え、歳に不足はない―― 仮にそんな歳になったとしても、やはり誰でも死ぬのは怖い。でも、人はひとりで生まれてきたのだから、死ぬ時もひとり、そう思って、その時を迎えるしかないのかもしれない。
今は家族でわいわいやっていても、いつかはそんな日が訪れる。そう思えば、このにぎやかな空間はとても貴重で、恵まれた時間を存分に楽しみ、満たされた光景を胸に刻んでおくべきだろう。
また、ずっと一人身の人は、ひとりを上手に過ごす術を心得ているかもしれない。所詮、人はひとりなのだろうから、それができることに越したことはないと思う。
しかし、常に家族に囲まれた人生を送った者にはそれは難しい。いくら地域社会の力を借りたとしても、家族の代わりとまではなかなかいかない。だから、配偶者が一日でも長く元気でいてくれて、そして自分も相手のために元気に過ごす、そうありたい。