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過ぎゆく日々

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ノスタルジー


 歌は世につれ、世は歌につれ――というが、たしかに昔の歌を聞くと、その頃のことがちょっぴり甘酸っぱく思い浮かんでくる。
 
「学生街の喫茶店」
「いちご白書をもう一度」
 耳にするたび、心のどこかが反応する。
 当時『ボブ・ディラン』が人の名前であることすら知らず、また『いちご白書』という映画を観たこともなかった。
 それでもあのメロディと歌詞は、青春時代の心にすっぽりはまった。
 
「神田川」
「同棲時代」
 男女の哀しい恋愛模様、切なさに胸がうずいた。映画化されたようだが、曲を聴くだけでもドラマのような情景が浮んだ。
 当時、結婚をしていない男女がいっしょに暮らすというのは、かなり特殊なことであり、親や世間に背いているようで、どこか影があった。
 同棲が世間に認知された現在では、この世界観は通用しないだろう。
 
 私が知っている最近のアニメソングといえば、せいぜい
「残酷な天使のテーゼ」
 でも、子どもの頃はといえば――
「狼少年ケン」
「鉄人28号」
 白黒画面だし、背景や人物の動きもお粗末でぎこちなく、今のものとは比べ物にならない。それでも、夢中になって見ていた。
 当時マンガというのは、大人たちに好まれていなかった。そんな親の目を気にしながらも、小遣いでマンガを買って読んでいたのだから、子どもたちを引きつけるものがあったのだろう。
 それが今や子どもどころか、その魅力は大人にまで浸透し、日本の立派な文化として世界にも認められているのだから驚きだ。
 
 音楽からでも十分昔を偲べるが、やはり映像のインパクトは大きい。
 昔の邦画などを見ると、町の風景や家の中の調度品など懐かしさ満載だ。それらの自然な昭和の暮らしを垣間見るのもいいが、ずばり
「always三丁目の夕日」
は、カラーだし、明るくて見やすい。
 
 音楽も、価値観も、半世紀近くもたつと驚くほど変化している。
 それぞれの年代の人がそれぞれの昔を懐かしむことで、ただ繰り返されるだけのような毎日に彩が加わることもあるかもしれない、そう、セピア色に輝いて。

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖