過ぎゆく日々
はじめ人間
原始時代のようなはるか遠い過去は、未来と同じくらい未知の世界だ。いくら遺跡やそれを研究する考古学というものがあるとはいえ、その時代を実際に見た人は今はいないのだから。
昔「はじめ人間ギャートルズ」というアニメがあった。原始時代を描いたギャグ漫画だが、とても印象に残っている。
いつも背中に赤ん坊を括り付けているお母さん、獲物であるマンモスを追いかけているお父さん、そんな家族とともに洞穴で暮らす主人公の少年の暮らしがハチャメチャに描かれていた。
今のような知識のなかった当時の人たちは、雷一つでもどんなに怖かっただろう。空が割れたような恐怖を感じたに違いない。などという悲壮な雰囲気など感じさせないのはギャグ漫画の利点だろう。
ところがそのエンディング曲は、心に語りかけるようなメロディに奥深い歌詞がのせられ、本編のアニメとの対比が印象深い。
♪なんにもない なんにもない まったくなんにもない
生まれた 生まれた 何が生まれた
星が一つ 暗い宇宙に生まれた
星には夜があり そして朝が訪れた
なんにもない 大地に ただ風が吹いてた♪
本当になんにもなかっただろう。あり過ぎる今、その頃を想像すると、心が安らぐような、また逆にうら寂しいような複雑な感覚に陥る。
でも、原始人たちが火山噴火や恐竜たちに負けず、たくましく生き抜いてくれたおかげで、今の私たちは存在している。
同じくアニメ「ルパン三世」で、タイムマシンを発明した敵が過去にさかのぼり、ルパンの祖先を抹殺しようとしているという設定があった。さすがのルパンもご先祖様をやられては自分は消えてなくなると苦戦していた。
そうなのだ、誰ひとり欠けても今の自分は存在しない。そういう意味で、今生きている人たちはすべて奇跡の存在なのだ。