過ぎゆく日々
マイナスの尊さ
若い頃はすべてがプラスだった。歳を重ねるごとに経験は増え、人生の彩も増していった。
ところが、しだいにその足取りは停滞し、いつしかマイナスの領域に足を踏み入れることになる。
それに抗っているうちに、普段は忘れているごく当たり前のことが身に染みだす。人生には限りがあるということだ。
孫は目に入れても痛くないほどかわいい――そう言われるのは、遺伝子を継ぐ幼子というだけではなく、一緒に過ごす時間、ともに生きる時間が短いと決まっているからかもしれない。
加齢とともにできることが少なくなっていき、今までいた人にも会えなくなっていく。それらを嘆いてもしかたがない。すべて自然なこととして受け入れる、そうするしかないのだ。
しかし、過ぎ去っていく時間や失われていくものの尊さに気づいた時、自分が今、手にしている幸福を深く感じられる――それでいいのかもしれない。