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過ぎゆく日々

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サザエさんとまるちゃん


 もし、「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」のように、ある時期にずっと留まるとしたら、いつを選ぶだろうか?
 
 
 子育てに追われ、少しでもいいから自分の時間が欲しいと思っていたあの頃、一方で、「お母さん」「お母さん」とまとわりつかれる幸福感は何ものにも代えがたいものだった。
 
< ある夕方、ひとりで用事を済ませ家へと急ぐ帰り道、近くまで来ると、電信柱に巻き付いて私を待っている子どもたちの姿が目に入った。ふたりも私に気づきうれしそうに手を振っている >
 
 その光景がたまらなくいとおしく心を締めつけたこと、何十年たった今でも忘れることはない。
 
 
 思春期真っただ中の高校時代。それは日々小さな冒険の連続。ある時は傷つき、またある時はときめき、いろいろなことを経験しては、文字通り泣いたり笑ったりの毎日。あれほど濃密な時など人生において他にはなかったと思う。この三年間に出会った人たち、起こった出来事のいくつかを今でも鮮明に覚えている。
 
< 女ともだちと自転車に二人乗りして校門を出たところ、電信柱にぶつかって転び、たくさんの下校する生徒たちの注目を浴びたこと。
 修学旅行中、門限ぎりぎりでボーリング場から、京都の夜の街をみんなで宿舎まで走ったこと。結局間に合わなくて、廊下に並んで正座する羽目になったこと、等々 >
 
 それに比べ、最近の三年間は特にこれといったことはない。変わらない日々が漫然と過ぎて行った、ただそれだけな気がする。
 
 
 
 母親としての時代を選ぶか、あるいは青春時代を選ぶか。つまりは家族の中での幸せか、それとも自分という個の充実感か。
 ああ、どちらも捨てがたい。二十代か十代か……。結局はそのどちらかに留まりたいということだろう。

「サザエさん」と「ちびまる子ちゃん」――
 明日から一週間が始まるという日曜の夜に、心をほんわかさせてくれる効果は大きい。そして、温かな家族や友人たちに囲まれたまま時が止まっている、そんな主人公たちがなんとも羨ましい。

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖