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過ぎゆく日々

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令和元年 暮


 固唾を飲みこんで新元号の発表を待ったあの日から、はや九ヶ月。その一年に少し満たない令和元年も終わろうとしている。
 年の瀬に書き始めた令和になって初めての年賀状。最後に記す日付が、令和二年 元旦―― その時ふと思った、元年という年賀状はないのだと。
 
 元号の引き継ぎとなった今年、世の中ではそれに伴う様々なことが行われた。中でも、宮中祭祀とういうものには、伝統というものが改めて思い起こされた。
 西洋などなら、おそらく煌びやかに華やかに執り行われるであろう行事が、日本では静寂と暗闇の中、わずかな炎に照らされて厳かに進められる。わび・さびなどのように、日本独特の文化だろう。
 
 一方、それとはうらはらに、私たち庶民の暮らしの中ではしきたりというものがずいぶんと薄れていってしまった。祭礼や正月の行事はそれなりに続けられてはいるが、私たちの子どもの頃よりずいぶんと簡略化されているように思う。
 お節は作るものではなく買うものになり、年賀状はSNS。ご近所総出で手伝った葬式も、今や専門業者が取り仕切ってくれる。そして、墓じまいという言葉を耳にするようになり、散骨、樹木葬なども特別なことではなりつつある。
 数十年でこの変わり様なのだから、いったいこれから先どうなっていくのだろう?
 
 ともかく新しい御代がやってきた。そして、さらにまた来年は東京オリンピック。滅多にないことが二年続く、この時に巡り合ったこと、深く心に刻まれることになるだろう。


作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖