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過ぎゆく日々

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まさか


 ここ二十年で世の中が急速に変わり始めた。
 パソコンが家庭に普及し、画期的だと思った携帯電話もあっという間にスマホへ。戸惑いを覚えながらも、どうにかついて行けると思っていた。
 ところが、しだいに知らない単語が飛び交い、説明が理解できないように。
 まさか、時代に取り残されていくとは思わなかった……
 
 
 オレオレ詐欺などの高齢者を狙った犯罪。
 これだけ世間で注意喚起されているのだから、自分は大丈夫だと思っていた。ところが先日テレビで、最近は裁判所を騙った書類が届くと聞いて、途端に自信が薄れていった。
 ひょっとしたら、騙されるかもしれない……
 
 
 昨年暮、東京に直下型地震が起こるという架空のドラマが放送された。あまりにリアルで衝撃的な映像に唖然とした。いつかは確実に起こるだろうが、自分が生きている間は大丈夫な気がしていたから。
 それなりの覚悟が必要なのだろうか……
 
 
 思春期の頃、自分が歳老いるなどとても考えられなかった。いや、結婚することも、母親になることさえ想像できなかった。
 ところが着実に時は流れ、今やその想像もできなかった現実の中にいる。
 そして、亡き両親がおそらく感じたであろう、孫たちのかわいさや、老いの不安をしっかりと味わっている。
 
 まさか、自分が高齢者になるなんて……
 まさか、思い出ばかりを愛おしむようになるなんて……
 はたして、この先まだ、新たな“まさか”が待っているのだろうか……
     
作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖