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過ぎゆく日々

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綱渡り


 人が歩んでいく道には、危険がいっぱい潜んでいる。
 病気や事故、災害等々。家から一歩外へ出たら何が起こるかわからない。いや、家でおとなしくしていても、禍が降りかからないとは限らない。でも、人はそれぞれの人生を謳歌している。それは脳が危険の不安よりも、楽しみを強く感じるよう調整しているのだろうか。
 
 しかし、あまり不用心では生命に危険が及んでしまう。そのため、恐怖というものが人の心には備わっているのかもしれない。危ないことはしないように、危険なところには近づかないように。楽しみながら一方で危険は回避する、その絶妙なバランスの元、人は日々生きている。長い長いロープの上を渡る綱渡りのように。
 
 昨今、その綱が大きく揺れているように感じられる。文明が高度に急発達したせいであろうか。便利になった反動が不安定さを生んでしまったように思える。寿命の延びに心がついていかない、自然破壊の代償に迫られている等々、足取りは鈍りなかなか前へ進めない。特に今は、世界を脅かしているあの感染症。今まさに、行き先が見通せない状況にある。
 
 でも、きっと私たちの脳はどんな局面にも対応してくれるはずだ。だからこそ、先人たちは生き延びて私たちに生を繋いでくれた。もう少し、もう少しがんばろう。そして、後人たちに生のバトンを繋いでいこう。
 
                       2021.3.3

作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖