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過ぎゆく日々

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まさかのまさか


 前に、老いることを「まさか」と嘆いた。でもそれは、誰もが通る当たり前のことだった。
 ところが、今回は本当に「まさか!」ということが起こった。それも地震などの以前から怖れられていた自然現象ではなく、おそらく誰もが思いもしなかったであろう疫病とは。
 
 医学の発達している今日、それは時代物で登場するものだというくらいの認識でしかなかった。昔は多くの人が命を落とし大変だっただろうと想像し、私たちには無縁の話だと思い込んでいた。
 ところがそれはとんでもない間違いだった。忽然と私たちの前に現れ、その上その怖ろしさをまざまざと見せつけた。正体が見えない不安、人を介して広がっていく残忍さ。
 
 生物の頂点に立ったと思える人類だが、いかに多くの難敵がいることだろう。
 大規模な自然災害は防ぎきれないし、自らが作り出したとんでもない放射能という副産物も手に負えない。そして、有史以来いまだ続く人間同士の殺戮。そして、今回世界中が巻き込まれた伝染病の脅威。
 昔ならその地域の風土病として終わったかもしれないが、現在格段に進んだ移動手段により、世界は今や一つの地域になっている。地球上の人間はみな運命共同体なのだ。
 
 そして、日本の運の悪さには嘆いても嘆ききれない。
 オリンピック開催が東京に決まったあの歓喜の瞬間から、長い準備期間を経て、あと少しというところでこんなことになろうとは。もちろんいつならいいということではないが、よりによって何でこのタイミングなんだと思ってしまう。経済的損失、国民の失意は計り知れない。
 ところが、第四波に入ったのではないかと日常生活でさえ危うい中、聖火リレーが始まり、開催へ向けて動き始めているのだ。それでいいのだろうか? 大丈夫なのだろうか? そんな疑問が先に立って、本来あるべきワクワク感など湧かない。
 
 ともかく、もうこれ以上の「まさか」がないことを祈るしかない。
  
                       2021.3.30
作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖