過ぎゆく日々
リセット
テレビゲームが流行りだした頃に思った。
“リセット” が現実にでもできたらどんなにいいだろう、と。失敗のやり直しがきく、すべてをはじめからやり直せる、そんなことができたなら、と。
そして歳を重ねた今、ビデオの “早送り” に思いを馳せるようになった。
イヤなことや辛いことを “早送り ”できたら、いや、どうせならCM “スキップ” のように飛ばすことができたらどんなにいいだろう。まさに、いいとこ取りだ。
でもそんなことをしていたら、残り少ない人生、ますます時間がなくなってしまう。たとえそうであったとしても、苦しい時を過ごしたくはない、そんな思いが勝つ。
若い頃は怖い物知らず。少しくらい痛い目に遭っても、それ以上に大きな楽しみがあり、仲間もいた。
でも、晩年ともなるとそうはいかない。友人たちとの交流も薄くなり、エネルギーが減っていくのと反比例するように病気やケガに悩まされるようになった。当然、気力も萎えていく。
だからといって、 “巻き戻し” をしたいというわけではない。それなりの経験はした。まあまあの人生だった。あとはただ、静かに余生を送りたい。いい時だけを振り返りながら、そして、今の若者たちにかつての自分を重ねながら――
いや、そんな老いた気持ちこそ “リセット ”して、心は生涯現役を心がけるべきだろう。
人生100年の時代に生きる者として。
2022.2.22