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②残念王子と闇のマル

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「我が星一族の猛毒で、この解毒薬以外では解毒できない。暗殺にも自死にも使うが、使った後はその者が助かることのないよう即死するよう作られている。だから、早くこいつを飲ませないと、麻流は…」

父上が言い終わらないうちに、王子の腕に抱きしめられ、柔らかな唇が私の唇に押し当てられる。

そして無理矢理こじ開けるように顎を掴まれ、頭を軽くふりながら舌がねじ込まれ、口を開かされる。

その隙間に王子の指が差し込まれるが、顎の筋肉が痙攣しその指を何度も噛んでしまった。

「…っ。こぼすなよ、マル。」

王子は指を噛まれる痛みに耐えながら、小瓶を私の唇に押し当てる。

その言葉の直後、口の中に液体が流れ込んだ。

口の端から溢れた解毒薬を、王子は舌で掬うとそのまま私の口内に挿入する。

そして舌を絡め、私が薬を嚥下できるように促した。

「…は…。」

私の口内に残っていた猛毒で、王子も少し苦しくなったようだ。

更に痙攣でその舌を何度も噛まれ、そのうち私の口内に血の味が広がる。

「…くっ…。」

けれど、それにも関わらず、王子は私に口づけ続ける。

そして口づけながら自分のシャツを脱ぎ、私に着せた。

「マル…ごめん、僕が幼稚でごめん!…マルへの気持ちは変わってないから…だから、お願いだから、生きてくれ!」

(王子…。)

王子の涙が私の頬に落ち、その涙に私の目尻から溢れた涙が混じる。

それはまるで、私と王子の心がようやくきれいに重なり合い、混じり合い、ひとつに融け合った瞬間のようだった。

「ソラ様…マルの痙攣が一回止まったのに、また震え始めました…解毒薬が効かなかったんでしょうか?」

そういう王子の声も震えている。

父上は、新たな薬を取り出すと、それを王子に手渡した。

「解毒によって体温が奪われ血圧が下がってきているからだ。これは内側から体を温める生薬が入っている。これを飲ませな。」

言いながら立ち上がった父上は、ベッドを整える。

「飲ませたら、ここに麻流を。」

「はっ。」

王子は父上に渡された丸薬を噛み砕くと、再び私に口づけ、それを舌で押し込んだ。

そして水筒の水を口に含むと、もう一度私に口づけ、飲ませる。

私が喉をならしてそれを飲み込むと、王子がぎゅっと抱き締めてくれた。

「飲んだ…今、飲んだな、マル!えらいぞ!」

一生懸命誉めて喜んでくれる王子が、愛しくて堪らない。

私は微笑んで安心させようとするけれど、まだ顔の筋肉は動かなかった。

王子は私をそっと抱き上げると、父上が整えてくれたベッドへゆっくりと運んでくれる。

「よし。じゃあマルに服を着せて。」

父上に指示されるまま、王子は私の世話をかいがいしくしてくれた。

そして私に布団をそっと掛けて、頭を優しく撫でてくれる。

「マル、ごめんな。…疑って、乱暴にして、傷つけて、ごめんな。」

言いながら、涙声になる。

そんな王子に声をかけたいけれど、声を発するどころか指一本動かすことができない。

「麻流、俺もそばにいるから、今はとにかくゆっくり休みな。」

(今、気づいた…。王子と父上って…口調が同じ…。)

そんなことを考えながら、私の意識は深く沈んでいった。
作品名:②残念王子と闇のマル 作家名:しずか