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天地孤独

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幻想夏愁




まるでおぼろに絶え入るすがた
薄らぎ見えざるHydrangea(ヒドランジア)
それを手探るしょうねんよ
(淋しいでしょう苦しいでしょう)
 ですからなにごとも統一とは自由に背いた罪悪でしょう
 調和を求めた嘆声は
 薄闇降りるこれ迄に
 次々継々氷解し
 それとどうじにまた夜も明け
 私の影は陽射しをうけて息苦しい
 (踏みしめる畦道が骨肉のようにも親しく覚えられます)
  しかしなぜ、私はゆめの大気にも
  うつつに吃(ども)り唾(つば)を呑み
  (堕落の香気はかく甘く)
   まことの孤独は憎しみさえなく
   (過去もあきれて過ぎ去りました)

「あの無邪気な靴音が羽ばたく図工室は」
「過ぎ去ってしまったのよ」
「あの弄ばれて絶え間ないメトロノームたちの音楽室は」
「過ぎ去ってしまったのよ」
「あの席へ座っていた女の子は」
「記憶のいちばん美しいところにいます」
 
流れる時の調べから
延長されたその声へ
揺らぐ想いのひとしずく
凍ることなくかすかに触れる
青春の私は無音の狂騒
豊かな夢想は病となり
(幻視のもたらす微熱です)
 やがていのちを尽き果たし
 ここにほの明るく濁った瞳は
 かつての光をゆめのぞみ
 ねむることなく静かに狂(ふ)れる
 
 
 こつこつ
 
 
   こつこつ
 
 
恋に紛れる淋しさは
 おもいに解けて狂おしい
 
 
 
在りし日の
頰笑む君よ
 幻想よ…
   無限の距離と
    無限の国境
作品名:天地孤独 作家名:ShimeiKyouka