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天地孤独

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紅の季





(光射し、その言葉)
 夏の遠ざかってゆく日、それぞれの夜明け
 賑わいの祭囃子が途切れ、唖者は黙する秋をさまよう
 悲しみよ、覚めないでいておくれ
 
 
(光射し、その言葉)
 私の忘れえぬ唯一の願いごとが、もういちどきみと
 おなじ景色をみることです
 それが叶うならば、私たちはすべてでわかりあえましょう
 わかりあえるはずでしょう
 
 
(光射し、その言葉)
 けれどもきみは遠かった
 夜道のかたちを歩き慣れ
 わたしのなみだがとどかぬそこは
 つめたくはげしく、空々しい
 そしてわたしが哀れにそよぎ
 心静かなぬかるみの、さなかで無力に立ち尽くし
 なみだは朝陽へ朽ちゆくころ
 むなしき痕さえ残らぬ日々が
 ゆきもどる春を水沫(みなわ)のように
 はじける、淋しく、目紛しい
 (つなぐ孤独を解りあう、愛しきひとの尊いぬくみ)
 (失せてゆく)
  うなだれる影、巨大に白く
  薄暗がりのとき
  風紋をみだして渚へと刻む
  その記号にさえ影を差しのべるか不能の恋よ
  (ふたりの恋は全能だった………)
  (もっと美しく笑えたじゃないか………)
 
   月下の水面を白鳥座は閃き
   神秘の軌道をえがいて映える
   宵にはもう記号の跡形もない
 
   (その夜、誓言すらかんたんに忘れたようなおまえが)
   (苦しみを知らず空を見つめていたから)
   (おれは憎しみで星を数えるようになった)

    (射し、ことば)
     わかれの微笑を風にたくし
     黙するきみに
     このかなしみの名を教えたのだ
作品名:天地孤独 作家名:ShimeiKyouka