天地孤独
夏愁
自我は背徳を正当とよぶ
暮れる夏と日と悲しみと
静かなみちに蝉の痕(あと)
ある晴れた夜の月光に、病と熱が乱れ飛ぶ
境で私は色もなく、月日を疑うこともない
ある晴れた夜の月光に、(感触と充溢)
(肌膚の波音…)(鉱物の夢───)
ある晴れた夜の月光に、頒(わか)つ孤独のなぐさみを
不意に手離す狂おしさ、また乱がしさ
熟れた微笑は無邪気に過(よぎ)り、昏(くら)い湿地を行き来して
ことりと私がねむる頃、ふとまた虚像へ甦る
ある晴れた夜の月光に、想起と憎悪に透明な
さびしい過去が密やかに、私の声をし泣いていた
ある晴れた夜の月光に、
私は目覚め
君はかげろう
作品名:天地孤独 作家名:ShimeiKyouka