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①残念王子と闇のマル

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「カレン様…?」

私が不安そうに訊ねると、王子は慌てたように私を見る。

「あ、いや、何にも深刻な話じゃないんだ!」

言いながら私と目が合った瞬間、すぐに目を逸らし俯く。

「あの、さ…僕はやっぱり…男なんだよ。」

うっすら頬を染めながら、ようやく王子が言った。

「絶対、マルの意思を無視して手を出さないって誓うけど…それには物理的な距離がある程度必要で…。」

俯いたままの王子の頬は、だんだんと濃い赤に染まっていく。

「同じベッドで眠っても我慢するけど…触れられたら…我慢にも限界がある。」

言いながら、斜め下から私を見上げた。

「だから、ベッドの中で触れるのは…やめて。」

甘く囁く王子は色気たっぷりで、私の体が甘く痺れる。

「こんな汚い部分、マルには見せたくなかったんだけど…。」

言いながら頭を抱え込む王子があまりにも愛しくて、丸まった王子の体を私はそっと抱きしめていた。

「ごめんなさい、王子。」

王子がビクッと体を震わせ、固まる。

「…王子じゃない…。」

掠れた声で王子は呟きながら、更に縮こまる。

まるで甲羅のなかに逃げ込む亀のようだ。

「さっき、王子に背中を向けて眠られてしまった時、ものすごく寂しくて後悔しました。」

私は王子を抱きしめたまま、更に言葉を続けた。

「私から、王子に触れたくなりました。」

「だから、王子じゃ…!」

私をはね飛ばすように身を起こした王子は、私を見た。

「…え?」

私はその王子の手を握ると、そのまま胸に頬を寄せた。

「王子に触れたくて、眠ってる王子にこうしました。」

王子は固まったまま、微動だにしない。

「そして、カレンって呼びました。」

そう言った瞬間、王子は私を力強く抱きしめた。

「…うそだろ?」

抱きしめながら、王子…カレンが掠れた声で呟く。

私はそれには答えず、カレンの腰に腕を回した。

「…マル…。」

カレンは抱きつく私の顎に手を添え、上向かせる。

カレンと私は数秒視線を交わすと、どちらからともなく顔を近づけた。

自然と目を瞑りカレンを待つ。

けれど、いっこうに何も触れない。

私はうっすらと瞳を開けると、カレンが真っ赤な顔をして横を向いたまま鼻を押さえていた。

「鼻血、ですか?」

私がティッシュを渡すとカレンは私からパッと離れ、洗面所へ向かう。

「先に寝てて、マル!」

カレンはそう言うと、洗面所の扉を閉めてしまった。

「カレン…。」

私は言われた通り、おとなしくベッドへ入る。

カレンが戻るまで待っていようと思ったけれど、疲れていたのか…知らないうちに深い眠りに堕ちていた。
作品名:①残念王子と闇のマル 作家名:しずか