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①残念王子と闇のマル

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再びシンデレラと心の距離


「ちょっと待ってて。」

王子はリンちゃんから降りると、果樹園へひとりで入って行った。

私は、リンちゃんの手綱をギュッと握りしめる。

半年前に、あんな別れ方をしただけに、だんだんと不安が募った。

結局、舞踏会の翌日に二人でガラスの靴を返そうと訪れたけれど、彼女に拒絶されていたのだ。

その後は王子は勉強で忙しくなり、彼女を訪れていないので、実に半年ぶりの再会となる。

(王子、大丈夫かな。)

王子はああ見えて、武術全般に長けているので、なにか事が起きるとも思えないけれど、待っているとネガティブな想像が膨らんでしまった。

「星、リンちゃん、ちょっと待ってて。」

私は黒い愛馬から降りると、リンちゃんと星の手綱を近くの木にくくりつけようとする。

「なにしてんの?マル。」

そこへ、王子が戻ってきた。

後ろからは、彼女がついてきている。

「…王子が遅いので、迎えに行こうかと…。」

どう反応していいかわからず、私は二人を見比べながら答えた。

すると王子は華やかに微笑んで、私の頭を撫でる。

「あ、ごめんな。ひとりで寂しかった?」

甘い口調に鼓動が跳ねるけれど、同時に彼女のことが気になった。

目の前でこんなの見せられたら…。

けれど、そんな私の心配をよそに、彼女は籠を私に差し出してくる。

「これ、良かったら食べて。」

そこには、彼女が丹精込めて作った赤い果実が6つ入っていた。

「たくさんあげても旅の邪魔になると思ったから、とりあえず今食べれるぶんだけ差し入れ。」

私は彼女が差し出した籠を受け取って、頭を下げる。

「ありがとうございます。」

そんな私に、彼女はいつも通り淡々と応じる。

「籠は返してね。配分は、馬に2つずつ、あなたと王子様は1つずつよ。」

「かしこまりました。」

私が頭を下げると、王子が私の頭を小突く。

「おまえはもう、従者じゃないんだよ。もっと胸を張りな。」

私が顔を上げると、王子がため息まじりに笑った。

「さっき父上にも言われたでしょ?花の都の王女で、従者じゃないって。」

言いながら、王子は星に赤い果実を食べさせてくれる。

その横で、果実のおいしさを知っているリンちゃんが大量のヨダレをたらしながらそわそわしていた。

「もうひとつは、3時のおやつにとっておこうね~。」

王子はリンちゃんにも果実を食べさせながら、優しく語りかける。

そして2頭の馬を撫でると、王子は残りの果実を自分の鞄にしまった。

「ありがとう。あとで僕らもゆっくり頂くよ。」

「王子。」

彼女に籠を返す王子に、私は声をかけた。

「王子、私は従者です。」

王子と彼女が私を見る。

「確かに、私は花の都の王女だし、王子の正妻候補として王様に認めていただけました。でも、それはあくまでプライベートな部分です。」

言いながら、私は跪いた。

「こうやって公的な場にいるときは、私は今まで通り従者で、王子は私の主です。」

私の言葉に、王子は不服そうな顔をする。

けれど、彼女は拍手をしてくれた。

「さすがね。だからこそ、王様もお認めになられたのよね。王子様にはもったいないわ。」

悪戯っぽく微笑む彼女を横目で見た王子は、私の手を引っ張って無理矢理立たせる。

「それは『視察』の時でしょ?移動の時はプライベートじゃん。お互い、平等な立場のはずだよ。」

彼女は王子の言葉に頷くと、私に微笑みかけた。

「ま、それも間違ってはないわ。…けれど、仕えてきた身としては、なかなか難しい問題よね、マル。」

彼女に初めて名前を呼ばれた。

それも親しみをこめて…。

心の奥の方がくすぐったくなる。

「ま、旅の間に二人でそういうバランスを作っていけたらいいわね。」

彼女は穏やかに微笑みながら、私と王子を交互に見つめた。

「あの時は、あんな態度をとってしまってごめんなさい。でも、正直わかってはいたのよ。王子様が、私の手に負えるひとではないってことも、王子様が本当に求めているのはマルだってことも。」

言いながら、私と王子の手を彼女はそっと握ってくる。

「気を付けて、いってらっしゃい。」

その言葉に、思わず涙がこぼれそうになる。

王子も、口元を引き結んで頷いた。

「また、帰ってきたら会いに来るよ。」

言いながら、王子は私の頭を撫でる。

「もー、見せつけないでよ!」

彼女はすっかり吹っ切れた笑顔で、からかってきた。

この半年で、彼女の気持ちもきちんと整理されていたようで、ホッとする。

私たちはそれぞれの愛馬に跨がると、彼女へ改めてお礼を言って、出発した。

私も王子も国に残す心残りがこれでなくなり、ようやく視察の旅へと向かうことができる。

ふり返ると、遠くに小さく見える彼女は、まだ手を振っていた。


「ねぇ、なんで後ろからついてくんのさ。」

彼女の姿が見えなくなる頃、王子が私をふり返って睨んでいる。

「え?」

言われている意味がわからず、首を傾げると、王子が星の手綱をぐいっと引き寄せた。

そしていきなり、飛び乗ってくる。

「ええ!?」

驚く私を後ろからギュッと抱きしめながら、王子は私の荷物をリンちゃんにぶら下げた。

「男の子だから二人乗りしても頑張れるでしょ、星。」

王子が星の首を撫でると、星が勇ましく鼻を鳴らして応える。

「えらいね~、星。さすが男の子!」

王子が首を撫でながら褒めると、よけい星は得意気に鼻を鳴らした。

「せっかく二人きりなんだから、視察じゃない時は、恋人同士でいようよ。」

星を撫でるのをやめると、王子は甘えるように私の頭に頬を寄せる。

そして私の体を抱きしめるその手で、体をそっとなぞった。

(ど…どうしよう…。)

一気に全身が激しく脈打ち、考えがまとまらなくなる。

身体中を強ばらせていると、王子が耳元で低く囁いてきた。

「…ねえ。」

「は、はい!」

息苦しくなりながら、掠れた声で答えると、王子が吹き出す。

「ぷっ、…くくくくく…。」

(はっ!からかわれた!!)

私を抱きしめながら、王子は肩を揺すって笑う。

「マルって、いつもはすっごいしっかりしてて冷静で頼りになるのに、ほんとに恋愛事ではうぶだよね♡」

そして私の頭の上に顎を乗せて、ため息を吐く。

「はぁ…もう可愛すぎて、底無しに好きになってくよ…。」

(!!)

私が呼吸を止めた瞬間、王子は星の馬首を突然返し、道から外れる。

賢いリンちゃんは、すぐに踵を返してついてきた。

「王子?」

私の呼び掛けに答えず、王子は人気のないところまで星とリンちゃんを走らせると、大きな木の下に止まった。

そして、王子は星の上で私を軽々と横抱きにする。

「ねぇ、もう従者じゃないのになんで服の下に鎖帷子着てんの。」

言いながら、その大きな掌で私の体をなぞった。

「そんなの着てるから、こうやって触っても、何も感じないんでしょ?」

確かに何も感じないけれど、体を触られているだけで鼓動は激しく高まり呼吸が荒くなる。

「わ…私は従者です!いざという時は王子の盾となって、いつでも王子をお守りできるように」

「ダメだよ。」
作品名:①残念王子と闇のマル 作家名:しずか