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社会に不適合な二人の

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飲み物の恨みは同じ量の涙で


 お中元とかお歳暮とかいうのは、その家の仕事関係で想い出が大分変わる物だと思います。
 私の家も父や祖父が一社会人として、それなりにお歳暮などをいただいていました。
 大抵は調理油や洗剤に素麺、良くてお菓子か即席ラーメンにチャーシューが増える程度です。

 しかし、ある時のお中元にカルピスの詰め合わせがありました。
 あの水玉のイラストが描かれたラベルを貼られている焦げ茶の瓶に入っているそれは、小さい頃の私からすれば夢のような物でした。
 さらにセットには普通のカルピスの原液の他にメロン味とイチゴ味のカルピスが入っていて、私は。
「美味しいカルピスにメロンが入ったらどんなことになってしまうんだろう!」
 と、子供特有の美味しい物と美味しい物を混ぜたら凄く美味しい妄想を爆発させていました。

 さて私も弟も好きな物は後に残すタイプで、まず普通のカルピスから封を切られ飲んでいきました。
 カルピスは原液なので何倍にも増えるので、流石にいっきに飲み干されるということは有りませんでした。
 数日後、ちょうど私が普通のカルピスを使いきることになりました。
 私は少し残念でした、前に弟が飲み干していれば私がメロン味の瓶をあけても良かったからです。
 しかし次からは味つきのカルピスです。
 しかも一瓶もあるのです。
「明日はついにメロン味が飲める!」
 と私は内心ほくそ笑んでいました。
 そして、その次の日です。
 学校から楽しみいさんで帰ってきた私が冷蔵庫をあけると、前日あったはずのメロン味の瓶が無くなっていました。
 私はもう半泣きの状態で祖母に尋ねました。
「メロン味のカルピスは?」
「弟が飲んじゃったわ。」
「え?でもカルピスってそんなすぐ飲めないじゃん。」
「あれ、割って飲むのじゃないからねえ。」
 そうです、私は勘違いしていましたが、普通のカルピスは原液ですが、メロンのカルピスはそのまま飲めるジュースだったのです。
 子供が一人で飲みきってしまえるものだったのです。
 幼かった私は泣きました。
 泣いて泣いて、その後に弟が泣いたのは言うまでもありません。

 ちなみにイチゴ味の方は、いつのまにか親戚が飲みきっていました。


――
[お中元]…夏の人間関係を物品で円滑にとか、そう言うえげつない風習。別名素麺。
[お歳暮]…同上の歳末の物。親がお菓子が好きじゃないと、お菓子がくる可能性は低下。
[カルピス]…乳酸飲料。だいたい四、五倍ぐらいに希釈して飲む。飲むと喉に白いなにかが出現する。


作品名:社会に不適合な二人の 作家名:春川柳絮