社会に不適合な二人の
大体の大名は最終的に負けますから
弟も私も歴史物が結構好きです。
歴史物が好きなだけで、歴史が好きなわけではないところが一つのミソです。
よくある学習漫画の歴史物を二人で読んで、るろうに剣心を読み、弟は信長の野望をプレイし、私は水滸伝や燃えよ剣を読むようになりました。
そして、それは私のなんとない話から始まりました。
「だけど、あれだよね。なんていうか、マイナーな大名の漫画読みたい。」
「センゴクとか?」
「いや、そうじゃなくて、なんていうのかな。中央というか、信長とかと全然関わらなかった大名とかさ。」
「あー、島津とかね。」
「そうそう。」
「たしかに、織田信長とか定番だけど、もう飽きたって言うか代わり映えしないしな。」
「そうそう、大体先が分かるしね。」
「センゴク桶狭間戦記の1巻は面白かったんだけどなー。」
「今川義元が主人公だったから、全然知らなくてわくわくしたね。」
「マイナーね。」
「南部とか最上とかね。」
「島津とか毛利とか大友とか見たいよな、龍造寺とか。」
「蘆名とかね。伊達要らないから。」
「島津の漫画見たいな。」
「南部の漫画見たいなー。」
決して言葉には出しませんが、そこには私と弟の確執があります。
東北の大名好きと、南の大名好きの決定的な意見の違い。
弟も私もそのことには一切触れずに、微妙な空気のまま今日も会話が途切れるのです。
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[るろうに剣心]…ジャンプで連載していた明治初期を舞台にした、剣術ファンタジー。ソードサムライX。
[信長の野望]…戦国時代の大戦略ゲーム。異常に強い織田家と徳川家の家臣を合わせたより武田家の家臣が強い。
[水滸伝]…中国の活劇。歴史物の皮を被ったファンタジー。
[センゴク]…宮下英樹先生著の戦国時代漫画。主人公が羽柴秀吉の家臣から大名になった仙石秀久と言うマイナーなところを突いてきた漫画。
[南部]…今の青森県あたりの大名。裏切りと内紛とクーデターの末、江戸で方言を馬鹿にされて引きこもる大名。
[最上]…山形とか秋田あたりの大名。2歳で当主になった人の子が、妹大好きで狐とか呼ばれた当主とかそんな大名。
[蘆名]…会津あたりの大名。伊達政宗に派手に負ける、そういう大名。
[島津]…鹿児島から九州をほぼ統一した大名。しかし時既に遅し、そんな大名。
[毛利]…広島あたりの大名。三本の矢とか、多分一本の矢でも折れなかった気がする大名。
[大友]…大分県あたりの大名。多分当主よりも雷切持ってた人の方が人気がある大名。
[龍造寺]…佐賀あたりの大名。四天王なのに五人いたりする家臣や武士道の理想像の家臣がいた大名。
作品名:社会に不適合な二人の 作家名:春川柳絮