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SPLICE ~SIN<後編>

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「スプライスが会った時、髪の長さは肩くらいだったんだよな?」
そんな話もしたかもしれないと改めて石像を見る。
膝に届かんばかりの長さだった。
「…ヴィラローカ……」
(どうしてこんなことになっているのだろうか)
と考える。
この島は『神の力を持つ人間』が眠る場所なのではないのだろうか。
「この辺りは『守護者の眠る地』だな」
バーカンティンが石像にそっと触れる。
うっすらと埃はあるようだったが、それほど長い時間積もったものでは無いようだった。
「『守人』が管理しているから綺麗なもんだ」
スプライスの疑問に答えるようにバーカンティンが独白する。
「『神である人』『人である神』、まとめて『現人神(アラヒトガミ)』とでも呼ぶが、現人神には守護者的な存在が付くことがある。お前とイ・ヨールみたいなもんだ」
話しながらヴィラローカの回りをグルグル回って何かを探しているようだった。
「『現人神』がこの地で眠る時、そういう特殊なつながりのあるものもこの地で共に眠ることが出来る。この辺りはそういう場所だ」
そういって、見つけたらしい。
フフと笑って髪でほぼ隠れた背をじっと見る。
「服の作りも翼人だな。羽も残っている」
スプライスを手招いて、背のある場所を指し示すと服についてしまったであろう羽もそのまま石像となって残っていた。
「…ってことは、カティサークは『現人神』だったの?」
そういうことになるだろう。
「さぁ、それは行ってみないと分からない。もしかしたら『ハザマ』の気配にたいして『とりあえず地上のものではない』という判断がされただけかもしれない。『神の力』はやはり地上の力ではないから、考えようによっては『ハザマの気配』も『神の力』と言って良いのかもしれないし…本当に神の力を持つものだったのかもしれないし」
そういわれると、ヴィラローカのショックも残るが早く会いたい(このような形かもしれないが)と思った。
そんなスプライスの気持ちを知ってなのか、バーカンティンは一通りヴィラローカの石像を見終わるとさっさと部屋を出て行った。
「バーカンティン!」
ヴィラローカに色々はなしたいこともあったはずなのだが、バーカンティンで手一杯になってしまう。
追いかけて外に出ようとしたところ
「直ぐに戻るから来なくても良いぞ」
と声をかけられてしまった。


「今の見た?アレが話していたヴィラローカなんだよ」
「本当はバーカンティンって言うんだけど、ホントにヴィラローカとは全然違うよね」
「いや、どこか似ている気もするんだ。性格とかなのかな?」
直ぐ戻ると言われたので、少し落ち着いてヴィラローカに話をしようと部屋に戻ってきた。
相手は石像。
ピクリとも動かない。
この石像の状態は『眠っている』状態なのだという。
このまま死んでしまうこともあるし、石像から人間に戻ることもあるという。
『眠っている』状態も外観的に幾種類かあるようなのだが、コレがポピュラーだとはスプライスも思った。
以前幾人か見ている。
ヴィラローカが石像と化した時何が起こったのだろうか。
なんでこんな姿で石になったのか。
気になることは多い。


ガタガタ

カタン

表で音がした。
「?」
話し声が聞こえる
「まさか…とは…」
「…で…」
片方はバーカンティンのようなのだが、もう一方は男らしいとしか分からない。
「…入るぞ」
二人分の気配と共に閉めかけたドアからバーカンティンが声をかけてくる。
「どうぞ」
もう一人が誰なのか、そもそもこの島に来てから本当に人と出会うことがあるとは思わなかったので緊張が走る。

キィ

ドアを開放すると、30代前半ほどに見える男がバーカンティンと共に立っていた。
「はじめまして」
声をかけられて、ボンヤリしている自分に改めて気づいてしまった。
「は、はじめまして…」
一体誰なのだろうか、と考えたところで
「この島の管理をしている『守人』さんだ」
「我々一族はこの島の来客と会った時名乗りません。またお名前も伺いません。ご了承ください」
「あ、はい、わかりました…」
「名前には特殊な力があるからな。ってわけでこの人の前ではオイとかオマエって呼ぶから」
と言うもスプライス側からについて気になったようだ。
「……オマエ咄嗟に名前呼んじゃいそうだよな」
「うん…」
「まぁ、しきたりと言うだけですので、そこまで気にされなくても大丈夫ですよ」
助け舟にホット胸を一撫でする。
「よかったな?」
「まったく」
そして守人をヴィラローカの元に案内する。
「彼女について何かご存知ですか?」
バーカンティンの質問にスプライスも知りたいと思う。
「私が生まれた頃には彼女は『こう』でしたが、父が幼い頃にやってきたとの事です。祖父が言うには見た通りの美人で記憶に残りやすかったらしいですよ」
少し笑いを交えて語るのは、そもそもこの島に来た者、とくに眠りに付く為にきた者を記憶し記録するのが『守人』の仕事だという事がある。
「彼女はこう見えて…あぁ、ご存知でしょうが有翼人でして。家のサイズが人間用だからと室内では翼を消して生活していたそうですが外では翼を出していたそうです。漆黒の翼でそれは綺麗だったそうですよ」
有翼人はさらに記憶に残りやすいだろう。
珍しい姿の人が訪れる事も多いだろうこの地でも、覚えやすいのではないだろうか。
「彼女は人を追いかけてこの地にやってきたそうです。その人と会えたのかは知りませんが、この島にやってきて10日せずにこの姿になったとの事です」
「気付いたら?」
「気付いた時にはこの姿だったそうですが……その頃この近辺で活動していたのは彼女だけだったため、祖父もしくは祖母がは毎日のように会っていたそうです。しかしある日姿を見なかったので貸していたこの家を覗いたところこうだったそうです」
夜にこの姿だったのか朝にこの姿だったのかは分らないが、この祈るようにも見える姿は弟に会えなかったのではないかと予想させる。

『明日(今日)こそ会えますように』

そんな声が聞こえてきそうだ。
「詳細は祖母がお話できると思いますがご案内しますか?」
聞いてみたい、と守人の顔を改めてスプライスは見るが、バーカンティンは首を振った。
「とりあえずは彼女の探し人に会って来ようと思います。その後お願いします」
(そうか)
改めて思う。
ヴィラローかがこの姿ならばカティサークも同じような姿の可能性は高い。
「ご案内しますか?大体の場所しか分りませんが」
『現人神の眠る』地域のことだろう。
「いえ、大丈夫です」
「…道ないんじゃなかったっけ?」
ボンヤリとスプライスも思い出す思い出す。
あの地域には外から船でしかいけなかったかと思う。
「はい、陸路行くことはできません」
その後道が作られたのなら…とは思ったがそんな事もないらしい。
「ここで眠った者にしか分らない道があるんですよ…私も以前この島で眠っていました」
バーカンティンの言葉に陸路で行く事にした。


ヴィラローカのいた集落で守人と別れ、奥に歩いてゆくもバーカンティンが急に意外なことを言い出した。
「スプライス、お前は表の海路から回れ」
「えぇ?!」
作品名:SPLICE ~SIN<後編> 作家名:吉 朋