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SPLICE ~SIN<後編>

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『…まぁ、私の体を乗っ取る際に肉体改造まで行いましたから、姉は。元々はここにいるカティサークと本当に似ていたんですよ。それが性別まで女性に変えられてしまいますし…。ちょっとはじけすぎですよね?』
「?!」
「ハハハ…」
驚くスプライスに笑うしかないバーカンティンの反応は、”カティサーク”にとってももっともらしい反応だったようだ。




その次に出てきた”カティサークは”漆黒の髪をした青年だった。
「俺は貴方の夢の中で会いました」
切れ長の静かな視線の青年だったが、厳しい感じは受けなかった。
ただ、視線を合わせようとはしない。
「俺の知る限りの事を話しましょう」
質問をする前から、制限時間が分かっているかのように話し始める。
「俺たちは厳密には『死んだ』者はいません。それぞれ生きている時間ある瞬間を此処につれてこられています。『死んだ』と言うものは、その死の瞬間を取り上げられたものです。取り上げられる時間は本当に一瞬です。しかしこの世界においてはこの世界で生きるカティサークという人物と共に時間をすごさなければなりません」
「ということは、人生における体感時間は長いのか?」
「いいえ」
とても早い反応だ。
人間的に感じられない…二人は目の前の『カティサーク』が人形のような気がしてきた。
「この世界での時間が過ぎて、元の世界に戻れば此処での記憶は全て消えます。自分の世界ではそれ以外の世界の出来事は、覚えていたとしても『夢の世界の出来事』なのです」
「まぁ、確かに『夢の世界』か」
自分が同じような事を体験したとしても、そう感じるだろうな、と想像する。
「それ以外に面白い事に気付きませんか?」
「「?」」
面白い事、といわれても色々思いつくことはある。
「先程から現れる俺たちの年齢。特に外見年齢ですね。ここにいる『カティサーク』とほぼ同じ者が殆どである事」
「そういえば…」
「それは思ったな」
それぞれの反応。
「それは此処にいるカティサークが19歳で成長を止めたからで…これは時間があったら説明しますが、それぞれの世界で約7600日生き、もしくはその前後で強い思いを残した時の時間を切り取られています。『死んだ』と言う者などはそれ以前に死んでいるか前後くらいになるのでしょう」
補注としてこの世界の一年は400日だ。
40日一ヶ月で10ヶ月存在する。
「先ほど、このカティサークから離れれば自らの世界に戻ると言いましたが、実は他の『カティサーク』に対してもこのように召喚される事があります。その際は他の世界であったことも全て思い出すことが…一部の者は可能なようです。俺はそのうちの一人ですが、他にも数人いるようです。ただ、このように話せる者はそう多くないと思いまして、取り急ぎ貴方方が疑問に思われるであろうことを伝えさせていただきました」
…そこまで話してやっと顔を上げる。
やはり静かな視線だったが、フと力が抜けたかのように柔らかい雰囲気が漂った。
「『19歳で年齢が止まった』とは、このカティサークが旅立った年齢が19歳だからなのですが…済みません、時間切れです」
「他にも次の人に聴いたほうが言いことある?!」
コレがこの『カティサーク』に対してスプライスがかけた唯一の言葉だった。
「どの世界でも有る『世界や他者との関係』……」
それだけ言い置いて消えていった。




その次に現れたのは、また雰囲気が少し違う女性だった。
首から下をしっかりと服で隠しているようでいて、太ももがチラリと露出されるロングスカートを穿いていたり微妙に色香を出そうかという感じも見える。
立ち姿自体は清楚さを感じさせるのだが、それがますますどこかアンバランスにも感じた。
そんな視線を感じたのか、露出部分をサッと手で隠し
「制服ですよ」
と第一声。
「あ、や、ごめんなさい」
慌てて露出部から視線を上げる。
「…やっぱりお前『男』だよなぁ…」
スプライスの行動を見てため息だか呆れだか分からないような笑いを漏らす。
「う…むぅ……」
否定は出来ない。
「とりあえずコイツに会ったことあるか?」
バーカンティンが声をかける。
「えぇ、夢でお会いしたですよね」
今までに無くポヤッとした雰囲気のしゃべり方だった。
「『19歳で成長を止めた』『世界や他者との関係』についてわかるか?」
「はい」
露出部を隠していた手をあげ、両手を胸の前で組む。
それが基本姿勢らしい。
「『19歳で成長を止めた』とは、こちらへ向かう旅立ちの際『ハザマ』にその力を移し始めたことによります。肉体の年齢を進めるということは内側にある力も大きくなるということですから、それを抑え始めたということですよ。先ほども説明していたかと思いますけれど、この力を抑える方法…厳密にはこの『カティサーク』から吐き出されるであろうこの世界のものではない力の放出、それによる影響を抑える方法は一箇所の『ハザマ』対して一度しか取れない方法です。しかも制限時間が有ります」
「制限時間?」
「『歪み』『亀裂』の大きさによって、『ハザマ』に投げ込むことのできる力の大きさが違うということです。小さな歪みであれば少ししか力を切り離すことが出来ないですから、あまり時間がもたないのですよ。幾度かは次へ到着する直前、私たちの力だけで進んだ事もあるのですよ」
「なるほど…下手に大きな力を切り離して『ハザマ』に送ろうとしても『歪み』が大きくなるだけで逆影響になってしまうかもしれないということか」
「そうですよ」
ニッコリと笑う。
「『ハザマ』に力を投げ入れて行動するのは本当に本当に最後の手段なのですよ…」
それは感じ取れた。
「『世界と他者との関係』のお話は人によって違うかもしれませんが、私の場合をお話しするですね。当たり前ですが、世界があって生活が出来て、生活は一人ではなくて主に社会の中になります。特に人間として存在する時はそうですよね。或る意味自分と他者とのつながりが『世界』であるともいえるかと思います。そして私たち『カティサーク』は個々人とのつながりを大切に情報としてもっていて…本当に大切な人、その『カティサーク』を形成する上で大切な人を具現化することが出来ます。初めの方で見たかと思われますが、『カティサーク』がカティサーク外の人の姿を出したですよね?あれは彼にとって大切な人なのです。確か双子の姉だったかと思いますが…そう、『カティサーク』に兄弟がいる場合は姉が殆どなのですよ」
くすくすと一度笑い
「人とのかかわり方、それぞれ有るですよね。それぞれの『カティサーク』を形成する上でとても重要です」
そこでちょっと首をかしげる。表情は微笑んだまま。
「これは普通にそうですか?」
そう言って消えた。



”人とのかかわりが自分を形成する上で大切”
"自分と他者とのかかわりが『世界』"
とはスプライスも常々思ってはいた。
そもそもバーカンティンと出会わなければ今の自分は絶対に無い。
断言できる。
「今のカティの大切な人ってどんな人なんだろうね」
自分にとってもバーカンティンを想い、フとあそこまで話して現さずに消えてしまったのが気になった。
「悲しい思い出と共に有ると思うな」
「え?」
作品名:SPLICE ~SIN<後編> 作家名:吉 朋