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マル目線(後編)]残念王子とおとぎの世界の美女たち

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満面の笑顔で拍手をする者、近衛隊長のファンだろうか…涙する女性、色んな表情が複雑に絡み合いながらも、その場は祝福モードに華やいだ。

王子は、そのままホールへ戻る。

パーティーのお開きを悟った招待客たちも、ホールへ続々と戻っていった。

私は樹の幹に深々と刺さった小刀を抜くと、海へ放り捨てる。

そして、近衛隊長と人魚姫の前に膝をついた。

「近衛隊長、いつから人魚姫のことを?」

近衛隊長は抱きしめていた人魚姫を、腕の力を緩めて見る。

「海辺に館があるので、幼い頃より海底国の者の姿はよく見かけていたんだ。その中でも一際美しい姫がいて…もういつからかわからないくらい、ずっと恋焦がれていた。」

人魚姫は、ジッと近衛隊長の顔を見る。

「人魚姫、どうですか?近衛隊長は、あなたの人となりを知らずに、あなたに恋したんですよ。」

人魚姫は私の方を向くと、視線を逸らした。

『嬉しいけど、複雑ね。』

紙に書かれた言葉に、近衛隊長は肩を落とす。

『王子様の気持ち、少しわかったかも。』

人魚姫はそこまで書くと、涙が一筋、頬を伝った。

「王子は、常にそんな感じなので正直、もううんざりされているんです。だから余計、頑なに拒否をしてるのですが…人魚姫は、近衛隊長を受け入れられませんか?」

私の言葉に、人魚姫は再び近衛隊長の顔を見た。

近衛隊長は人魚姫の手を包み込むように握ると、乞うようにそのラベンダーの瞳を覗きこむ。

「姫、どうかこれから私の屋敷で共に暮らしませんか?そしてお互いを知り合いましょう。」

人魚姫は近衛隊長のブルーグレーの瞳をジッと見つめた後、小さく頷いた。

その瞬間、近衛隊長は瞳を輝かせ、人魚姫を強く抱きしめた。

(異性にこれだけ自分を求められて愛されるって…すごいことだよね。)

私はその奇跡のような光景が眩しくて、その場から姿を消した。

影の世界に生きる自分には縁のない、眩しい世界に堪えれなかったのだ。

天井裏から王子を見つめながら、私は切ない気持ちで唇を噛みしめた。