赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話
「あら。要らないわよ、今さら私に母親なんか。
あたしはあたしのままだし、パパはパパの生き方をすればそれでいいでしょ。
ご用はいったい何でしょう?。
そのためにわざわざ、あたしを呼んだのでしょう?」
「おっ、そうだ。お前、今日は暇だろう。
清子ちゃんをつれて、喜多方の街を、案内してやってくれ。
そのあたりで朝からやっている、ラーメンでも食べさせてくれると
ありがたい。
ワシは酒蔵で市さんをもてなしておくから、案内を頼んだぜ」
「はい。了解しました。
じゃ早速、腹ごしらえと行きましょうか。たまと・・・ええと何だっけ?。
きみの名前は・・・そうだ、清子ちゃんだ」
くるりと背中を向けた恭子が、下駄を鳴らして駆けだしていく。
(え・・・こんな朝早くから喜多方の人たちは、ラーメンを食べるのかしら、
どうなってんのよ、この街は?)
面くらったままの清子が、あわてて恭子の背中を追いかけていく。
喜多方市でラーメン(中華そば)が食べられるようになったのは
昭和初期からと言われている。
定着したのは、昭和20年代の前半から。
朝からラーメンが食べられるようになったのには、諸説がある。
3交替制の工場に勤務していた人たちが、夜勤明けにラーメン屋へ立ち寄った。
朝早く農作業に出た農家の人がひと仕事を終えて、ラーメンを食べにいった。
あるいは、出稼ぎから夜行列車に乗って帰ってきた人たちが、暖まるため、
家に帰る前にラーメン屋に立ち寄ったから。など、いろいろ有る。
はっきりしているのはずっと以前から、朝からラーメンを食べることは、
喜多方の人たちにとって、ごく自然のことだ。
今でも早朝ソフトボールの帰りとか、二日酔いのためラーメンを食べてから
出勤するなどのことが、当たり前のようにおこなわれている。
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話 作家名:落合順平