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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話

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 蔵はまた、男たちの夢の結晶でもある。
「四十代で蔵を建てられないのは、男の恥」「蔵は男の浪曼」といわれている。
喜多方の男たちにとり、自分の蔵を建てることは、誇りであり、
自らの成功を外部に示す証であり、生きる目標のひとつでもある。

 
 喜多方の蔵は、さまざまな表情を持っている。
白壁や黒漆喰、粗壁やレンガなど、外観もじつにさまざまで、扉の技巧に
いたるまで、きわめて多彩な形で構築されている。
それはそのまま、喜多方に生きる男たち1人1人の、ロマンの現れかもしれない。

 もうひとつ、おおきな理由が有る。
明治13年に発生した、喜多方の市街地一帯を襲った突然の大火。
火は市の中心部から瞬く間に燃え広がり、300棟余りをことごとく、
焼き尽くした。
くすぶり続ける焼け野原の中に厳然と残ったのが、今も残っている
多くの蔵だったと言われている。

 喜多方の小原庄助旦那がいとなむ大和屋商店は、江戸時代中期の
寛政二年(1790)に創業している。
以来、9代にわたり酒を造り続けてきた老舗の酒蔵だ。
清冽な飯豊山の蒸留水を、仕込み水として使用している。
「弥右衛門酒」をはじめとする銘酒と美酒を、数多く生みだしている。

 「よう来た。よう来た。
 さっそく来てくれるとは、わしとしても嬉しい限りだ。
 おう。たまも一緒か。すごかったなぁ、お前のあの名演技は!
 遠慮することはない。入れ、入れ。ここがウチの酒蔵だ」

 黒塗りのタクシーが止まった瞬間。
待ちかねていた小原庄助が、酒蔵から、脱兎のように飛んできた。
和服を着ていた昨夜とは異なり、今日は地味な酒蔵の作業着などを着込んでいる。