赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話
いつものように、右から清子のパンチが飛んでくる。
『へへん。お前の攻撃なんざ、すでに見抜いておるわい。
右から来ると見せかけて本当は、左からの平手打ちが本命だ。
その手は食うものか。おっとっと・・・」
ひひひと笑った瞬間、たまの口がブラジャーが外れてしまう。
『愚か者。結果が出る前に笑うから、みずから落ちる羽目になるのです。
こら。たま。乙女の胸を、大きな目をして覗き見るんじゃないの!。
お願いだから、少しのあいだあっちを見ててちょうだい。
すぐに済むから・・・・』
『どうしたのさ。賑やかだけど、何か事件でも起こったのかい?』
カラリと襖が開く。寝る支度を整えた小春姉さんが、隣室から顔を見せる。
『あ、いえ。なんでもありません』あわてて胸元を整えて、清子が正座する。
清子の膝の上で『いつもの、小競り合いです』とたまが、ヘラヘラと笑い返す。
「そう?。何事もないの。ならいいのですが。
明日は早くから喜多方に出向きます。たまも清子も、早く寝なさい」
じゃあね、と襖に手をかけて閉めようとする小春に、なぜか清子が
食い下がる。
「小春お姐さん。
喜多方の庄助旦那様は、たまと清子と小春姐さんの3人でおいでくださいと、
熱心に誘って下さいました。
小春姐さんと喜多方の旦那様には、深い縁が有ると伺っています。
なにゆえに小春姐さんは、お誘いをお断りしたのですか?
せっかくのお誘いです。
3人揃ってお伺いするのを、楽しみにしていると思うのですが?」
「他意はありません。売れっ子芸者は忙しいのです。
別口の先約がありますので、明日は無理です。
そのかわり。市さんにお願いしておきましたから、安心して行ってきなさい。
私のことは気にしないでください。
たまと一緒に、蔵とお酒と、ラーメンの街を満喫しておいで」
「ふぅ~ん。蔵と、お酒と、ラーメンの街だってさ喜多方は。たま・・・・」
「素敵な街ですよ、喜多方は。
明日のお出かけを楽しみに、もうおやすみなさい、2人とも。うふふふ」
(37)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話 作家名:落合順平