赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話
『たま。お前の口は、いつでもひとこと余計です。
あたしが機転をきかせたおかげで、お座敷の綱渡りも無事に済んだのよ。
感謝しているのなら、あたしに、お礼を先に言うべきでしょう』
『あん時は全くもって、肝を冷やした。
あんな格好のまんま、綱渡りなんかした日にゃ、命がいくつあっても
足りねぇや。
ありがとうよ確かに助かった。大いに感謝しているぜ』
『感謝しているのなら、いい加減に、あたしの背中から降りなさい。
子猫のくせにやたらと重いわねぇ、おまえは』
『言うねぇ。清子も。
忘れ物を拾ってきてやったというのに、感謝の前に、いきなりの小言かよ。
なんだよ。いらないのなら、また捨ててきちまうぜ』
『わたしの忘れ物?。いったい何を、拾ってきたのさ?』
『何だかよくわからねぇ。
だがよ。妙に乳臭い、細長いバンドみたいなもんだ』
『乳臭い、細長いバンド・・・・え。あ、ああぁっ!』
清子が布団をはねのけ、いきなりガバっと飛び起きる。
たまが咥えてきたのは、洗面所へ忘れてきた、新調したばかりのBカップの
ブラジャー。
浴衣の襟を、いそいでかき合わせた清子が、たまの口から
ブラジャーを奪い取る。
『簡単には離さないぞ。ちゃんと礼をいうまでは・・・・』
たまも簡単には離さない。必死に食い下がる。
清子の新調したばかりにブラジャーに、たまがぶらりとぶら下がる。
『こら。離しなさい。BカップがCに伸びちゃうじゃないのさ。たま!』
『お前。いつの間にBカップになったんだよ。
このあいだまで確か、ブカブカで、隙間だらけのAだったはずだ!』
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話 作家名:落合順平