赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話
狭い路地を抜けると、川の堤防にぶつかる。
裏口が、堤防に面して作られている。
入り口の横に麺の箱やら、具材に使われる野菜の箱が、山のように
積まれている。
『すごい量だろう。一日で食べちゃうんだ。これだけの量の麺と、野菜を』
足元に気をつけてなと、慣れた様子で恭子が狭い通路を抜けていく。
「おじちゃん。恭子です。
あたしの、大切なお友達を連れてきました。
美味しいラーメンと、スタミナたっぷりのとんかつを上げて頂戴。
いつものようにお代は、9代目から、好きなだけ巻き上げてください。
あっ。お水はいりません。
そこの冷蔵庫から勝手に、サイダーを持っていきます。
そうだ。もうひとり珍しい生き物がいるの。
出汁につかった煮干が有ったら、分けてちょうだい。
三毛猫のオスで、たまという子猫が一緒なの」
「へぇ。三毛猫のオスかい。たまげたねぇ・・・」
髭面の店主が、厨房から顔を出す。
「おっ。本当だ。恭子の連れに、可愛いお嬢さんがお見えだ。
珍しいことがあるもんだ。
おい、婆さん。事件だ事件。えらいこっちゃ!
人嫌いの恭子が、可愛い女の子と、三毛猫のオスを連れてきたぞ!」
「へぇぇ。珍しいことがあるものです。恭子に、お客様かい。
腕によりをかけて作るから、2階でくつろいでいるといいさ。
あら、あんた。若そうなのに、浴衣の着こなし方が、ずいぶん粋だねぇ。
日傘まで用意しているところをみると、あんた只者じゃないね」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話 作家名:落合順平