赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (40)
恭子の隠れ家
ラーメン店がひしめいている喜多方の街とは言え、すべての店が
朝からラーメンを提供しているわけではない。
準備中や、仕込みで忙しそうなお店の前をいくつか素通りしたあと、
恭子の足が、行列の見える一軒のラーメン屋へ向う。
『清子よ。
朝の9時を回ったばかりだというのに、もう店の前に、行列が見えるぜ。
朝からラーメンを食う連中がこんなに居るのかよ。
いったいぜんたい、どうなってんだよ、この街は・・・』
たまが大きな目で、前方を見つめる。
店の前に、観光客たちと思える一団が順番を待っている。
セーラ服に日傘。白い足袋に、真っ赤な鼻緒の下駄を履いた恭子は、行列を
横目に見て、そのまま追い越していく。
店舗の脇に小道が見える。人ひとりがやっと通れそうな小さな路地だ。
その小さな隙間に、恭子がズンズン入っていく。
(え、そっちなの?)清子もあわてて、恭子につづく。
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話 作家名:落合順平