赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話
「清子。いいかげんに逃げださないと、おばあちゃんはしつこいからね。
おばあちゃん。口はいいから、手を動かしてちょうだい。
表で皆さんが、首を長くしてお待ちかねです!」
「そんなに言うなら、あんた、たまには手伝ってくれたらどうなんだい?
バイト代なら、いくらでも出してあげるから、さぁ。
猫の手を借りたいほど、朝からウチは、大忙しなんだ」
「猫ならそこにいるじゃないの。
清子と一緒にいる、そこの三毛猫に、手伝いを頼んでみたらどう?」
「あのう。あたしでよければお手伝いしますけど・・・・」
清子が思わず、余計な言葉を口にしてしまう。
どうせ否定されると思いきや、即座に『助かるよ』と喜ばれてしまう。
「アルバイトの子が急に休んじまって、てんやわんやだ。
戦力不足で、にっともさっちもいかない状態なんだ
どこの誰かは知らないが、手伝ってくれたら、おおいに助かる!』
奥の厨房から、おかげで助かると、髭面の嬉しそうな声が飛んでくる。
「はい。私でよければ、喜んでお手伝いをします。
でも、ラーメン屋さんのお仕事は初めてです。
厨房に入っても、邪魔で、足手まといになるだけだと思います。
注文取りと、食器の上げ下げくらいなら、お手伝いできると思います。
いいですか?。その程度の、かんたんなお手伝いでも?」
「願ってもない。大助かりだ。悪いねぇ。
じゃあ早速だが、この前掛けをつけて、お店の方の応援に入ってくれ。
いいねぇ。天の助けだ。可愛い看板娘が、いきなりワシの店に現れてくれた。
あんた。名前は?」
「清子です!」
『お前は、ここで邪魔にならないように、静かにしているんだよ』
通路にたまをおろした清子が、キョトンとしている顔を見つめながらしっかりと念を押す。
『入ります!』明るく答えた清子が、前掛けを腰へ巻きつけながら、
早くもお店に向かって飛んでいく。
「清子ったら。お店の仕事なんか、手伝うことなんかないさ・・・・
あ~あ、行っちゃった。
嬉しそうに、お店へ飛んでっちゃったわねぇ。
たま。あんたのご主人はすごい人だねぇ。行動的で、さ。
仕方ないな。私も手伝ってやるか・・・・
まったくぅ・・・清子のやつ。余計なことに積極的すぎるんだから」
(41)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 36話~40話 作家名:落合順平