赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 31~35話
「えっ、お姐さんがいまだに、想い続けているという、あの喜多方の・・・・」
「ふふふ。お前がうろたえることはないだろう。別に。
そうさ。その当人の小原庄助さんだ。
あたしがどんな男を好きになったのか、関心があるだろう、お前も」
突然そんな風に言われても、どうしたらいいのか・・・・と当惑している
清子の足元へ、たまがまた、尻尾を引きずりながらやってきた。
『面白そうな話だ。さっきのおわびに、俺もお座敷に連れていけ。清子』
と見上げる。
『馬鹿言ってんじゃないわよ、たま。これは遊びじゃありません。
お仕事ですから』連れて行けるはずなどありませんと、清子が鼻で笑う。
『でもよう。そこに置いてあるかごは、おいらにぴったりだぜ。
連れていってくれよう。オイラも見たいんだ。
小春は命懸けで惚れて、尽くすためだけに、この東山温泉へやってきた。
どんな男か見たいだろう。誰だって』
『そうは言うけどさ。バレたら大変なことになるのよ、お前。
八つ裂きどころか、三味線の革にされてもしらないわよ』
『かごの間から覗き見するだけなら、別に問題はないだろう。
連れて行ってくれよう、清子。
お前のことも愛しているからさ。
おれだってこれからさき、持てるいい男になるための勉強がしたいんだ。
独身男の向学心てやつを、無駄にしないでくれ。頼むよ、清子』
『なんだかなぁ・・・
あんたの場合、どこまでいっても魂胆が見え透いているけどね。
ただの興味本位だけの話でしょ。
でもまぁいいか。静かにかごの中に隠れているんだよ、本当に。
ばれたら、あんたもあたしも、只では済まないことになるんだからね』
『おっ、恩にきるぜ。さすがは清子。そうこなくっちゃ!』
(32)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 31~35話 作家名:落合順平