赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 31~35話
「それって・・・もしかして、メリハリの不足している体型、
という風に聞こえます。
胴長、短足では問題が多すぎるでしょ。お姐さん!」
「世間ではそのようにも言います。
けど、それほど気にすることもないでしょう。
女性の骨格は、15~16歳までに完成すると言われています。
人によっては、22歳までかかるそうです。
思春期を迎えるのが遅かった人は、すこしだけ遅くなると言われています。
で。どうなんだいお前は。思春期の到来は?」
「初潮は、とうに来ておりますが・・・・」
「馬鹿。初潮じゃないよ、思春期のことだ。
居ないのかい。ひそかに想いを寄せている男の子とか、ボーイフレンドが?」
『居るには、いるのですが・・・』と答えかけた瞬間。
清子の足元へ、たまがのそりと歩いてきた。
『へぇぇ。好きな男が居るのかよ、お前、その顔で?』
胡散臭そうな顔でたまが清子を見上げる。
『うるさい。このド短足子猫!』
狙い済まして繰り出された清子の右足が、むなしく空を切る。
『へへん。すでに読んでおるわい。お前の右足が来ることなど、すでに承知済みじゃ』
くるりと左へ逃げたたまが、勝ち誇ったように清子を見あげる。
その瞬間を清子は逃さない。
清子の左足が、たまの尻尾を的確にとらえる。
『愚か者。右足はフェイントじゃ。本当の狙いは左足で、お前のしっぽじゃ!』
まいったか、こいつめ・・・清子が嬉しそうに、たまを見下ろす。
「こらこら。もうそのくらいにしなさい、いい加減にしなさい、2人とも」
着付けの手を止めた小春姐さんが、清子とたまを交互に睨む。
「いたずら子猫と遊んでいる場合ではありません。
本日のお座敷には、とても大切なお客様がお見えになります。
粗相のないよう、気をつけなければなりません」
はい。綺麗に出来上がりました。ポンと清子の帯を小春が叩く。
「あとは、襟元に名刺と扇子をいれます。
かごを持って、ぽっくりをはけば、立派な半玉の出来上がりです」
なかなかの半玉ぶりですねぇ、と小春が目を細める。
「小春お姐さん。いま、大切なお客様がお見えになるとうかがいました。
本日はいったい、どのようなお方がお見えになるのですか?」
「気になるかい?。喜多方の小原庄助さんだよ。
会ってみたいだろう、お前も」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 31~35話 作家名:落合順平