赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 31~35話
「そらまた良い考えどすなぁ。何か無いかしらねぇ・・・小道具が」
「そうやねぁ。せっかくのたまの晴れ舞台です。
手ぬぐいと日傘だけでは、たしかに、寂しいものがありますねぇ」
「もうすこし、凛々しくしてはどうですか。
武者人形の兜なんかどうでしょう。
ついでです。鎧も全部着させて、猫武者風に仕立てあげましょうか」
「おっ金太郎がいるぞ。金の字の腹掛けなんかどうだ。
頭に兜。、腹に金太郎。
悪くはないが、まだ地味すぎるなぁ。もっとほかに何か無いか、
これではまだ、格好がさびしすぎる」
「長靴なんか、どうですか。
さきほど入口で、幼子用の長靴を見かけました。
ひとっ走りしてそれを取ってまいりましょう。いい絵になります」
「そいつはいい考えや。兜に、金太郎、長靴で決まりだな。
清子、準備ができるまでその子猫を絶対に逃がすんじゃないぞ。
オジサンがいまから、凛々しく飾ってあげるからな。
ははは。なにやら一気に、面白くなってきたぞ。
いまから史上最高の傑作が観られるぞ」
たまがジタバタと抵抗する。しかし。それも虚しく兜やら腹巻やら、
長靴などの小道具が無理矢理、たまに装着されていく。
『こら。や、やめろ。おまえら。
清子まで一緒になって喜んでいる場合じゃないぞ。
綱渡りをさせられんだぜ。
ごちゃごちゃこんなものをおいらに取り付けて、いったいどうするつもりだ。
綱から落ちたら、さすがのオイラだって只じゃ済まねぇ。
笑ってる場合じゃないぜ、清子ったら。
早く助けろ。な、なんだよ・・・・お前。
なんだかんだ言いながら、結局、お前が一番、喜んでいるじゃねえか。
喜んでいられるのも今のうちだ。
あとでかならず仇をとってやるからな。よく覚えておけ、この薄情女』
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 31~35話 作家名:落合順平