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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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とっさにジュンの背中を押し伏せさせる。俺も一緒に床に張り付く。その1m上を銃弾が通り過ぎていった。ドアに穴が開いていた。外の奴が撃ってきた。ベレッタを2発撃つ。
ドアにまた穴が開き、割れたガラスの向こうで男が腕を抑えて車に寄りかかった。背後から走りよる足音がした。さっきのやつが銃弾を聞き戻ってきたのだ。俺は床に張り付いたまま回転して仰向けになる。奴が現れた。俺を見て銃を向ける。が、もちろん俺のほうが早かった。1発で奴の額に穴が開いた。
「ジュン!」
 手を引いて立ち上がらせる。外の車は撃たれた男を乗せ、走り出していた。逃げるようだ。
 今は追わなくていいだろう。俺達は店を走り出て車とは反対方向に逃走した。
 なんだってんだ。
 ちくしょう、帰りにたこ焼き買えなかったじゃねぇか。

 俺達は駅前北口ロータリーまでダッシュで戻り「早安」の前も通過して駅に飛び込んだ。
 ジュンは息を弾ませて両手を膝の上に置いていたが、さほどきつくはなさそうだ。体力もかなりあるようだ。こいつはなかなか高性能な娘なのかもしれん。
 それはともかく。
 前かがみになり両腕で胸をはさむ姿勢なため、現在のジュンちゃんはやけにセクシーだ。
 走ったせいで呼吸が荒く頬が紅潮しているのもそれに拍車をかけている。
 今までかわいいお顔と綺麗なあんよばっかり見ていたので気がつかなかったが、胸元も歳と身長の割に女らしかった。上から見る形になっているためワンピースの胸元に谷間が存在しているのを確かに確認できた。
 ガン見しすぎたか、ジュンは俺の視線に気がついた。棘のある口調で聞く。
「何見てるのよ」
「胸」
 俺の正直さは全国に通用する。
 以前アキバに行った折、アイドルグループ・アカンベ48のライブ会場に並ぶ群衆に出くわした。何気に見上げたそのポスターに俺はつい正直に口走ってしまった。
「アッコちゃんってそんなにかわいくないな」
 アッコちゃんとはもちろんアカンベ48のセンターを勤める松田アキコである。
 当然俺は暴徒と化したファン達に追われることになった。
 その時フランス革命直前、暴徒から友を救うため高らかに名を名乗り暴徒を自分に引きつけたフランス王妃の恋人と自らを重ねてみたのだが、まあそんなにかっこよくはなかったか。
僕の弱点は正直すぎるところだッ! 反省しなければッ!
ばっちーん。
ジュンの平手打ちが俺の頬を捕らえた。
さっきと同じように避けたのだが、こんにゃろう今回は一歩踏み込んできやがった。きちんと前回の失敗を踏まえてとっさに改良した技を放つとは・・・。こいつ、やはり只者ではないのでは。
それにしてもいくら胸の形に見とれていた(下着のせいかもしれませんが丸かったです)としても十分避けられる間合いだった。完全な油断だ。この辺りが親父や兄貴に「お前は素人だ」といわれ続ける所以なのだろう。
「こんな状況でいい加減セクハラやめなさいよ!」
さすがにご立腹のようですな・・・。でもどんな状況でもセクハラなんか許さんだろ、お前。
「んじゃ仕事しますか・・・」
俺は切符売り場で入場券を買いジュンにも渡した。
「なんで?」
 顔の高さまで持ち上げてまじまじと見つめている。珍しいですか? 入場券。
「南口に行くんだ。ちと用事ができた」
「それだけなら入場券なんかいらないじゃない」
 これにはわけがある。この駅の北口と南口を移動するには300mも西側の踏切を渡らなければならない。しかもこの踏切が一度閉まると10分ぐらい平気で閉まっている開かずの踏み切りなのである。この街の南と北を分断する大きな問題点だ。さすがに歩道橋の建設が計画されているが、これができたところで600m以上の移動を余儀なくされるのは変わらない。そこで入場券だ。駅構内に入ってしまえばホームの連絡橋を使って数分で移動可能である。それでこの駅は全国でも入場券売り上げがトップクラスという妙な肩書きを持っている。鉄っちゃんにもちょっと人気だ。
 それなら・・・とジュンは駅に入り軽やかに階段を上っていく。細い肩の上を長い髪がふわふわと歩調に合わせて揺れる。一歩下がってスカートの中をのぞくようなことはしてませんよ、念のため。
 連絡橋をわたり南口から出ると北口よりあからさまに寂れたロータリーが待ち構えている。空が見上げられる背の低い店が並ぶ駅前商店街だ。
 駅を出たらすぐ左にある小さなラーメン屋が俺の目的地だった。間口一間、カウンター席5人がけのみの小さな店だ。その小さな店先に置かれた椅子に意外な大物達が座っていた。俺が声をかけるとそこにいた3人は笑顔で迎えてくれた。
「ご無沙汰してます、鍵さん」
 一人は駅前の地主であり、ほかにも様々な物件、企業を持ちこの街の経済界のボスである鍵 敬三さん。うちの会社の元の地主さんと友人だったため知り合い、何かとお世話になっている。
 60を過ぎた方だが背が高く筋肉質の肉体を維持している中々精悍な人だ。
「やあ、風見君。今日は活躍だったそうだね」
「ははは、もう知ってましたか」
「あの事件のおかげで演説が中止になったものだから、ここで暇をつぶしてるのさ」
 嘘だ。その辺のご隠居ならともかくこの街のドンがこんなところで井戸端会議しているはずはない。しかも隣に座っているのはこの街随一の有名人だ。俺以上と言っていい。恰幅のよすぎるボディ、それに見合ったぽっちゃりフェイス。どこの会派にも属さないが若いころから地道に努力し庶民的で市民に愛され市長にまで駆け上がった男。
 鳥取 新平。市長とっとりくんの愛称で呼ばれる、この街のリーダーだ。
 政治には何も文句はないが、消防団の式の時どうにも不恰好な敬礼をしたのが印象に残っている。誰か教えてあげればよかったのに。
 この街の政治と経済のトップが駅前のラーメン屋の前で日向ぼっこしているのである。
 ちなみにもう一人は鍵さんの側近兼ボディーガードである黒澤さんだ。身長180cmのがっしりした肉体の上にオールバックのおっかない顔が乗っている。その辺のチンピラならにらまれただけでおしっこ漏らしちゃうほどの威圧感を持った男が二人の横に直立している。
「市長、彼をご存知ですか? 彼が最近話題の便利屋BIG-GUNの風見 健君です」
 鍵さんが市長に紹介してくれた。市長と顔見知りになっておくのは悪くない。
 市長は人懐っこい笑みを見せ立ち上がった。まん丸なおなかがぷるんと揺れる。
「ネットで話題の彼だね。今日銀行強盗を退治してくれた。でもこんなに若いとは思わなかったよ」
「市長、若くとも彼は便利屋を経営する社長です。行動力があり責任感もある立派な青年で私の大切な友人でもあります。どうかお見知りおきください」
 鍵さんにここまで褒められると少々照れる。
聞いていたかね、ジュンちゃん。
俺はどうぞよろしくと頭を下げた。
市長はこちらこそよろしく頼みますと握手してくれた。握手は政治家の基本だね。
「市長の票読みにでも来たんですか?」
 さっき署長も言っていた通りもうすぐ選挙なのだ。
「当たらずとも遠からず・・・かな」
 鍵さんはダンディに苦笑した。
「心配しなくても市長の圧勝でしょ? 人気もあるし鍵さんも支持しているし」