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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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「で、今度こそどこに行きたいんだ」
「どっか案内してよ。この街初めて来たのよ」
「案内と言っても何にもない街だからなぁ」
 ジュンは少し口を尖らせて俺の顔を覗き込んだ。
「ここって歌手のサランオールカマーズとか狭山ユーゾウとかの街なんでしょ? 縁の物とかないの?」
 痛い所を突きやがる。
「それがないんだ。電柱に歌の名前が書いてある程度」
「なんでよ、観光資源になるじゃない。トップシンガーがご当地ソング歌いまくってるのになんにも利用してないの?」
 言われてるぞ市長! しかしごもっともだ。またとないこの街の資源をここの市民はまったく生かしてないのだ。せいぜい通りに「サラン通り」とか名前を付けるくらいだ。夏になればサランの歌にひかれて多くの若者がこの街の海に来るというのに、迎え撃つこの街はそれを受け止めて金を落とさせる努力が欠けている・・・。なんとかしてほしいぞ。
「んじゃあとりあえず」
 チェックアウトを済ませると俺はホテルから南へ、駅のほうに歩いた。
 ホテルと駅の中間地点辺りにデパートがある。正確にはディスカウントストア。何でも売ってるスーパーだ。
「ここがこの街の憩いの場所、Dクマだ」
 ジュンはこの街最大のデパートであり市民が愛してやまない店を「へー」と見上げた。
「デパートが憩いの場所なの?」
「ああ、何にもない街だからな。週末はここにきて何買うわけでもなくぶらぶらするのがこの街の娯楽だ。んで帰りにそこの「みこしや」でたこ焼きをお土産に買うのがセオリーだ」
 Dクマの1階東側にはたこ焼き売り場がある。それが「みこしや」だ。
「おいしいの?」
「愚問だ。名前はたこ焼きだが関西の物とはちょっと違う。外はカリカリ中はとろりじゃなくたこ入りの一口サイズお好み焼き、が一番近いと思う。どっちがうまいというわけじゃないが、みこしやのたこやきは絶品だ」
「食べたいー」
 大きな瞳が輝いた。まだおやつの時間には早くないか。ところで通りを渡ったところにある「みやけ饅頭」もおすすめだ。自動饅頭製造機が目印。白餡の甘さが絶妙で後引くうまさだ。
「あとでな。まずはDクマにレッツゴー」
「ウインドショッピングね、まぁいいわ」
 ジュンはそれなりに楽しそうについてきた。
 婦人服売り場でこれがかわいいだの、安いだの、靴売り場でやっぱりブーツ暑い、サンダル買おうかななどジュンはDクマを堪能していた。他店よりめちゃくちゃ安いのがDクマ最大の魅力である。庶民の味方なのである。ジュンみたいなお嬢様には今まで縁のなかったタイプの店なのだろう。散々はしゃいで終いには男性服売り場にまで足を運んで俺の服のコーディネートまでし始めた。そんな服ばっかりじゃだめだよーとか言って。仕事着だ、ばかもの。まぁ普段も着てるけどね。
 白のデニム上下で現在は袖をまくって着ている。左肩にはBIG-GUNのワッペンが張ってありシンボルマークは風見鶏である。そんなにかっこ悪いかなー。お気に入りなんだが・・・このGジャン。
 ところで女の買い物とは恐ろしい。店員呼び止めてあれを試着だこれが可愛いなどと始めて小一時間。やっと納得して買うのかなーと思ったら「また来ます」ときたもんだ。
 俺には絶対に出来ない芸当だ。あの店員の時間って一体。
 俺がDクマに来づらくなったらどうしてくれるんだ。
 将来男と別れる時もこんな風にシビアなんだろう。俺は背筋が冷たくなるのを感じた。
 そんな他愛もないときを過ごしていると俺のセンサーに何かが触れた。瞬時に緊張が体に走り全身が戦闘モードに移行する。
 ゆっくり回りを確認すると店員も客もたまたま俺たちの周りにはいなくなっていた。そこに早足で接近してくる影があった。二人。背の高い背広の男が俺の左右から近づいてきた。
「ジュン」
 俺が引き寄せようとすると奴らは突然走り出し間合いをつめてきた。一人はジュンの肩をつかみもう一人は俺をつかもうとする。
 が、やすやすと押さえ込まれる俺じゃない。つかまれる前に軽く左へステップ。男を回避しつつジュンをつかんだ奴のわき腹にエルボーを叩き込んだ。男はあえなくジュンを放して転倒。俺は間髪いれずターン。一足飛びに俺をつかみにきたほうの奴との間合いをつめる。手のひらで奴の腹を押す。男はもんどりうって3mもふっとんだ。
 相手に密着することでバランスを崩し全体重を乗せた攻撃を叩き込む。接近寸打を基本とする八極拳の流れを汲む技だ。今のはパンチではなく手のひらからの体当たりなのだ。大男がぶっ飛んでも不思議ではない。
「来い!」
 俺はジュンの手をつかんで走り出した。まだ状況が飲み込めていないようだ。表情は固まったままだ。無理もないか。
階段へ向かい下の階を目指す。なんとDクマには下りのエスカレーターはないのだ。階段を降りきるあたりでやつらが追いすがってきた。階段の上からやつらはなんと。
ドンっと空間が震えた。
俺はジュンを引っ張って階段を飛び降りさせ二人で横に転がって奴らの死角に入った。
あいつら、撃ちやがった。拳銃でだ。俺達を。
即座に立ち上がり店内を進む。ここは1階で出口はすぐそこなのだが、そこに向かうには奴らから丸見えだ。
1階の文房具売り場を腰を低くして走る。平日の昼間だ。客は極端に少ない。だが発砲事件だ、店内は何事かとざわめきだした。
何列もある陳列棚の影に隠れ状況を確認する。
「怪我は?」
 ジュンは首を振った。さすがに顔色を無くしている。
「すまねぇな、撃ってきたところを見るとお前の追っ手じゃないな。銀行強盗の逆恨みかな」
が、ジュンはまた首を振った。
「違うわ、私を追ってきた人達よ。昨日見た人達だもん。その時はうまく逃げられたんだけど」
 なんだと・・・。
「今度はどう? あっちは撃つ気満々だよ?」
 不安が混じった声だった。俺はわざとらしいくらい明るく言ってやった。
「大丈夫、奴らは素人だ。なんとでもなる」
「そんなことわかるの?」
「物腰、目つき、銃の扱い。そんだけ見れば判断できる」
 これは本当だった。今朝の強盗も素人と見抜いたからあんな派手な大立ち回りをやったのだ。
「とにかくここを出る。走れるな?」
 ジュンは力強く頷いた。気力が回復したらしい。気丈な奴だ。
 防犯用ミラーを見上げて奴らの位置を見る。俺達を追って1階に来ている。二手に分かれて俺達を探していた。手には拳銃を持ったままだ。ガードマンなにしてんだ。俺はベレッタを引き抜いた。予備のマガジンを持っていたので今はきちんと13+1発拳銃に収まっている。ハンマーを起こす。なるべくなら愛するDクマの中では撃ちたくないものだ。
 身を低くしたまま出口へ向かう。Dクマの出入り口は多数ある。さっきとは違うところへ向かおう。一人が近づいてきた。俺はぶら下がっていたコンパスを一つつかむとあさってのほうに投げた。物音に気づいて男は俺達から離れた。出口へ走る。出入り口は一般のデパートと同じようにガラス製で外が見える。出口の向こうはすぐ道路だがそこにでかいアメ車が止まっていた。その前に黒い背広の男が立ってこっちを見ていた。
 手には、こいつも拳銃を握っている!