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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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 自動車の免許もそうだが何故証明写真というのはいまいちな写りになるのだろう。長年使う物だし撮る人も少し気を使ってほしいものだ。
「何度も言うがお前は警官じゃない。拳銃所持許可証は自衛のために発行されるもので警察権を認めたものじゃない」
 シェリフは黒い顔の真ん中にあるやけに白目が印象的な眼で俺を睨み付けた。
「ましてや殺人許可証じゃないんだぞ」
 ここまで言われると俺も言い返さずを得ない。
「ここは俺の街だ。自分の街は自分で守る。当たり前の事だろ」
「お前は悪党撃ち殺して英雄気取りかもしれないが、銃撃戦の流れ弾が誰かに当たったら? お前は責任取れるのか? それだけじゃない。お前の真似をして自分もできると勘違いしたガキが返り討ちにあって殺されたら? お前知らぬ顔できると思ってるのか」
 まぁ・・・言いたい事はわかる。年季も違う。俺は一歩引きかけた、その時。
「でもあの時ケンちゃんが行かなかったら強盗は逃げてました。逃げた強盗がまた犯罪を犯して誰かを傷つけたら、その時は警察は責任を取れるんですか? 責任を言うなら目の前の交番にいてもたもたしていた警官にこそ問題あると思います」
 突然横から援護射撃があった。署長は、いや俺も驚いた。
 まさかここでジュンが、おっかない顔して怒ってくれるとは思わなかった。署長も意外すぎる助っ人にやや舌が回らなくなった。
「あいつらは倉庫番に飛ばす」
 苦々しく言った。女の子は苦手なんだろう。署長は俺を恨めしげに睨んだ。
 形勢はここに大きく逆転した。
「女の子の力を借りて恥ずかしくないのか」
「別にー」
 むしろえへんぷい。
「ついでにこの娘と同じような意見が市役所とここに仰山届いている」
 署長はデスクのノートパソコンをこっちに向けた。俺を擁護し即時解放を求めるメールがいっぱい着ていた。もっと過激に警察批判するメールもいっぱい。
「なんでこんなに短時間でHPが炎上する」
「あー」
 ジュンが高い声を出した。
「これを狙ってさっきブログに書き込んだのね」
 頭いいなぁジュンちゃん。
「公共の権力に一人で立ち向かうのは不可能だからな」
「本当に人気者なんだ、ケンちゃん」
 ふふーん♪
「なのになんでもてないの?」
 ほっとけボケ。
「ケンよ」
 署長は落ち着いた声で話し始めた。
「この街を守るっていうお前の気持ちはわかる。悪いことじゃない。むしろ素晴らしい事だ。賞賛されていい。お前を援護する市民がこれだけいるのも当然のことだろう」
 署長、いやシェリフはパソコンを閉じた。
「だがな、今日みたいな真似はやっぱり個人がやる事じゃないんだ。個人がやれば必ず独善的になる。やりすぎちまうんだ。お前らから見れば規則や法律に縛られてる俺達は歯がゆく感じるだろう。俺だって煩わしく思う事が今でもある。しかしそれはやはり必要な事なんだ。人はある程度枠を持たなければ人で無くなっちまう。お前は危ない綱の上にいるんだぜ」
 シェリフの声は穏やかだ。わかっている。この人は俺の敵じゃないんだ。
「お前が本当にこの街のために働きたいなら、きちんと学校に通ってここに入れ。誰よりも優秀な警官になれる。お前は真に英雄になれるんだ」
「俺は英雄じゃない」
 両手を挙げた。
「ただの悪党だ。この街の英雄はあんただけさ」
 シェリフはため息をついて手を振った。
「もう行っていいぞ。調書は適当に書いとく。市民が押し寄せると厄介だからな」
「あい、ではまたー」
 俺は軽やかに立ち上がるとドアに向かった。
「ああ、署長」
 立ち止まって振り返る。
「なんだ」
 めんどくさそうな声。
「一応通信で高校には通ってるぜ」
 シェリフはダンディに笑ってくれた。
 
「かっこいい人だねー」
 ジュンはもう怒っていなかった。こいつにもシェリフが俺のために怒ってくれた事がわかったのだろう。
「俺が尊敬する数少ない人物だ」
 我ながら殊勝な言葉だった。
「ケンちゃんの口から尊敬なんて単語が出るとは思わなかったよー」
 こいつ初対面の年上に対して完全にため口だな。とんでもねー野郎だ。
「お前、俺の事なんだと思ってるんだ?」
「えー」
 あからさまにばかにした顔になった。かわいいのがむかつく。
「彼氏にはどうかと思うよー」
 へいへいわかったよ。女ってのはどうして何でも色恋沙汰に結びつけるのだろう。
「で、俺の用事は終わったぞ。これからどうするんだ」
「んー、そうねぇ」
 少し上を向いて考え出した。より目になっている。繰り返すがかわいいのがむかつく。
「観光でもすんのか、なんとなく時間つぶすのか、行きたいとこがあんのか」
「んーと」
 あー、なんかいらついてきた。
「とりあえず行きたいのは・・・」
 下らん事言ったら置いてく。
「ホテル」
 金髪の美少女は怪しく笑った。
 なんだ、いい子じゃないか。誤解してた。
 俺はジュンの手を引いていそいそと警察署を後にした。 

 シャワーから放たれた熱いお湯は少女の若い肌に当たり、玉になって転がり落ちる。
 塗れた髪はうなじから背中に張り付いて細い肩を・・・って止めよう。
 今のは単なる妄想で俺はその場を目撃していない。
 奴と仲良くシャワールームになんかいないのだ。いやホテルの部屋にすらいない。
 一人さびしく奴が借りた部屋の前に立ち尽くしているだけだ。
 時折通るボーイが怪訝そうにこちらを見てくるのがつらい。しくしく、なんにもしないからせめて中に入れてよお。
 あるいはなんでもするから・・・だが。
 大体状況はつかめたと思うが、俺達はとっとと街道沿いのビジネスホテルに入った。中世から存在する首都と旧首都を結ぶこの国の背骨とも言うべき国道。通称1国沿いにあるこの街唯一のビジネスホテルだ。警察署も同じ街道沿いにありその距離は200mほどだ。警察署を出るとジュンは俺を追い越してズンズンホテルに向かうものだから、なんて積極的な奴・・・と少し感動してしまっていた。
 しかしやつはすでにこのホテルに1泊しており、到着と同時にチェックアウトするのー、とのたまった。しかもその前に、
「あなたの会社客間あるわよね、鍵かかるでしょうね?」
と、確認しやがった。結論から言うと何故かあるんだけどね。この野郎、俺んちに泊まって宿泊代浮かしたいだけだった。
 それでも俺は、どうせもう1泊代取られるんだから少し部屋で休まない? と食らいついた。したらば奴はにっこり微笑んで「それもそうね!」と言って一人で部屋の中に消えていった。
 それが30分前の話。
 いい加減にしろよ、このやろう。
 と、思ったところで奴はいい加減にして出てきた。水色のスポーツバックが荷物に追加されていた。
「おまたせー」
 にこやかに、やけにさっぱりした顔で。
「お前・・・人待たせてシャワー浴びてやがったな」
「うん、一緒に入りたかった?」
 うん。
「あほ」
 人は表と裏を使い分ける事がある。
「だったらせめてロビーで待っててとか言えよな」
「そうだねー、ごめんごめん怒った?」
 ジュンは笑いながら上半身だけ少しこちらに傾けた。シャンプーの香りがわずかに感じられる。
 怒ろうかなと思ったがめんどくさいからやめた。