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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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 ジムはこれをシェリフにプレゼントした。シェリフは礼を言ってくれたが困った顔をしていたそうだ。使う気はなかったんだろう。
 しかし一ヶ月ほどしてシェリフから電話が来た。金は払うから自分が今使っている銃をこいつと同じ仕様に改造してくれと。ジムが電話口で涙ぐんでいたのを今も覚えている。
 だから飾ってあったガバメントはジムが最初に贈った銃で、シェリフが今も相棒として腰に吊っている銃は依頼されてジムがカスタマイズした元々シェリフが持っていたガバメントなのだ。完成して納品した際に二人で撮った記念写真は今もジムの部屋に飾られている。
「ふうん、いい話ね」
「二人ともいかす奴らだよ」
 2階の食堂に到着した。10畳ほどのそんなに広くない、何の変哲も無い食堂だ。俺らは好き勝手に飯を食う事が多いのでメンバーが集まって使用することはあまり無い。
 椅子に座るとジムがうまいコーヒーを入れてくれた。サイフォンではないが、ちゃんとコーヒーメーカーでいれたコーヒーだ。すばらしい香りが食堂に漂っていた。ジュンが一口飲んでから感想を述べた。
「おいしい。モカ?」
「わかる?」
 ジムの感心した声にジュンは恥ずかしそうに笑った。
「酸味があるから。これしかわからない」
「はは、俺もそういう理由でこれを選んでるよ」
 ジムの一人称が「俺」に変わっていた。すでにリラックスしているのだろう。コーヒーのおかげか、ジュンの力か。俺も飲む。うまい・・・早安とは比較するのも失礼なほどに。
「で、早速仕事の話に入るんだけど。ケンの話だと君は家出中で御両親の追っ手が迫っていると・・・」
「そうです」
 ジュンは素直に頷いた。ジムと話す時大概のやつは丁寧な話し方になる。ジムの誠実さがなせる技だろう。
「で、Dクマで襲ってきたのがその連中」
「そう思います」
 ジュンは口を湿らすようにコーヒーを一口ふくんだ。
 ジムはじっくり考え人差し指でテーブルを叩きながら言った。
「でも、どう考えてもそれはおかしいよ」
 そりゃそうだ。
「撃ってきましたもんね」
「そう」
 ジムは言葉を選びながら話している様だった。いつもよりゆっくりした口調だった。
「君の家庭の事情はわからないが、家出した娘を連れ戻すのに銃は使わないだろう。まさか親に殺されるような覚えは無いよね」
「ありません」
 真剣な表情になっていた。大人びて子供っぽさが消えた美貌には色気すら漂いだした。
 反面肩はさっきまでより細くはかなく頼りなげに見えた。
「どうだろう、とりあえず家に帰ってみるというのは。Dクマの一件はやっぱり銀行強盗の繋がりで君の家とは関係ないと思うんだ。うちに帰って確認してみてはどうかな。もちろん安全が確認されるまで我々が護衛する。何かあったら電話をくれればすぐに駆けつけてあげるよ」
 ジムの声は優しく諭すようだった。しかしジュンの顔は初めて見る表情に変わった。
 暗い。暗かった。そして今までと一番違うのは、返事が無かったことだ。
「電話だけでもどう?」
 また無言だ。困っているようにも見える。ふむふむ。
「まぁ、いいんじゃないか?」
 俺が助け舟を出した。
「せっかく家出なんてしてきたわけだし。しばらく自由な世界にいたって」
 ジムもそれ以上は続けず、それもそうかと言ってくれた。大人だ。
「夕食の準備でもしようか。お客さんだしピザでも取るか?」
 ジムが席を立つとジュンも表情がパッと明るくなり立ち上がった。
「あ、私何か作る。キッチンあるんでしょ」
 無理して切り替えようとしているんだろう。俺は逆らわずキッチンを指差した。
 食堂の隣には割りとでかいキッチンがある。業務用の流しやレンジも備わっている。もともと大勢が食事するように作られているのだ。
 それにしてもジュンの手料理。女の子の手料理。
すこし心躍る。
ジュンはジムとともにキッチンに入っていった。あそこに女の子が入ったのは初めてだろう。ありがたやありがたや。
そこに聞きなれた爆音が聞こえた。ガレージの監視カメラに一台のバイクが入ってくるのが映った。もう一人の仲間、北下三郎だ。インターフォンを使い来客を告げると三郎はカメラに軽く頷いた。
 ほどなく三郎はヘルメット片手に階段を上がってきた。黒くやや長い髪、ややとがった輪郭に鋭い瞳と口元が収まっている。背は俺より少々高く170中頃くらいか、スマートで足が長い。ちょっと東洋人離れしたルックスとスタイルの持ち主だ。
「今日は大騒ぎだったらしいな」
 嫌味ったらしくハンサムは口を開いた。
「活躍と言ってくれ。後半は仕事だし」
「こんな時なんだ、あまり目立つことはしないほうがいいんじゃないか」
 あいかわらず無感情で冷たい声だ。
「へいへい、気にはかけとくよ」
 三郎は気にいらなそうに口を歪めた。
「で、ご自慢のガールフレンドは?」
「キッチンだ。夕飯を作ってくれている」
「何自慢気に言ってる。お前だけに作ってくれてるわけじゃあるまい」
 わかってるよ、やかましい。
 三郎は挨拶するつもりかキッチンに足を向けた。俺も続く。
金髪娘は長い髪をリボンで束ねエプロン姿でキッチンに立っていた。
い、いいじゃん。
 髪がアップされたおかげで後ろからのプロポーションがはっきり見える。細い肩からなめらかにしまっていくライン。そこから意外なほど丸くなった・・・。
「何見てんのよ」
 ジュンが振り返って睨んだ。
「おしり」
 正直さに世界選手権があれば俺は表彰台に上れる事だろう。
 メダルに歯形をつけてネットが炎上している様が眼に浮かぶ。
 フライパンが飛んできた。今までと違って真っ赤な顔している。すまん、今のはちといやらしすぎたな。
 あっちいってなさいよと、きつい声で告げるとジュンは調理に戻った。もっとなんか言うかと思ったが意外とあっさりしていた。三郎が隣にいたのだがそれも気がつかなかった。
 やつなりに料理に集中しているのだろう。
料理と言ってもたいした食材があるわけではない。チャーハンとスープ程度の料理らしいが包丁捌き、調味料の使い方など見ていると中々の腕と見た。さすがに自ら作ると言い出しただけのことはある。
俺、昼もチャーハンだったのこいつも知っているはずだが大目に見てやろう。
三郎も感心しているのかしばらく声をかけずに見守っていた。
ジュンの方が三郎の帰宅に気づいて笑顔で振り返った。
「北下三郎さんですね。初めましてセーノ・ジュンです。噂どおりハンサムさんですね」
 こいつ・・・俺に対するのと声の質が違う。
 その言葉になんと三郎が照れたように笑った。こんな笑い方は絶対にしない男と思っていた。こいつの笑顔は女口説くための作り笑いだけかと。
「そうです、よろしく」
「簡単なチャーハンですけど、すぐできますから待っててね」
 すると三郎は苦笑いした。
「すまないが、すぐにまた出かけなきゃならないんだ。1時間ほどで戻るけどね。ちょっとジムの手も借りたいんだ」
「俺も?」
「ああ、たいしたことじゃないが急ぐんだ。すぐに来てくれ」
 ジムは少し困惑したようだったがジュンにごめんねと告げるとキッチンを出た。
 三郎は「こいつ3人前は食うから」と俺を指差すとまたガレージに戻っていった。