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遅くない、スタートライン 第2部 第4話 8/18更新

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俺は主題歌の件をディレクターに話した。ディレクターはすごく喜んでくれた。またバンド仲間達がディレクターに直訴にも行ったらしい。美裕の言うとおりだった!美裕はカフェの準備が終わった時間に俺のボイスレッスンに付き合ってくれた。美裕は4歳から18歳までピアノを習っていたし、またピアノスクールでボイスレッスンを受けていた。その当時そんなに深く考えずに、歌が好きな美裕は好奇心で習ったそうだ。ご本人は…

「あぁ…若かったから(笑)カラオケ上手くなりたかっただけ」と言ってましたが、俺は後日…美裕の歌声にビックリさせられるんだ。また忙しくなりそうだよ。あ!これだけは美裕に確認しておかなきゃ!俺はまたパソコンでネット検索を始めた。美裕はたぶん、今カフェをオープンさせることで頭一杯だと思う。たぶん忘れてるよ!

私はこの頃時計のアラームが鳴る前に目が覚めてしまう。緊張してるのかな?今日も午前6時の起床の予定が、目が覚めたらまだ朝の4時だった。もう一度寝ようかと思ったが、目が覚めてしまい着がえて調理場に立った。カウンターのスタンドに置いたスマホの画面が明るくなった。
「だぁれ?まだ朝の4時半ですけど」私は指でスマホの画面をフリックした。

「あぁ…忘れてたぁ。すっかり」
スマホの画面はラインだった。それもマサ君だ!マサ君徹夜ですか?徹夜ならいいか…私はラインの返事をした。

「ッゲェ!もぉ起きてるんか?俺は今から寝るんですけど」美裕からすぐに返事があってビックリした俺だ。やはり忘れてたな!自分の誕生日!

俺は美裕にコールした。寝る前にコールせんと、起きたらまた返事が遅くなる。

「すみません…忘れてました。あ!マサ君のお誕生日は忘れてないよ。もぉプレゼントも買ってるし」美裕の声が高くなった。
「やっぱりな。俺の誕生日は覚えてくれててありがとう。あのさ…忙しいと思うけど美裕の誕生日会しようよ」
「うん。嬉しいぃ(*^^*) もう試作品は作らずに今はね…どれだけスピーディにできるか練習してるの。今日は昼からなら大丈夫だよ」
「うん。起きたらカフェに行くわ。男手もいるでしょ。作業しながら話するよ」
「了解!じゃおやすみね!マサ君」
「おぅ…作業済んだらちょっと寝ろよ。美裕」
「あぃ」と返事したが、あの女寝ないよな?

俺は昼前に起きて、美裕のカフェを手伝いに行った。今日は千尋さんと有ちゃんは来てないそうだ。明日も休みで美裕1人で作業していた。
「そっか…千尋さんと有ちゃんは明後日までお休みなんだ。と…言うことはもう開店準備はできたの?」
俺はカウンターに両肘をついて、コーヒーをブレンドしている美裕に聞いた。
「うん。後は前日に仕込むんだ。3月31日にヘルプ3人来てくれるし、加奈ちゃんと加奈ちゃんの後輩と前職場の後輩パティシェも来てくれるの。加奈ちゃん達は3月中旬から研修でこっちの同系列のホテルに2週間滞在して、休暇の3日間で手伝ってくれるって。後輩パティシエは老舗ショップ辞めちゃって、東京の製菓専門学校の上級クラスに行ってるの。まだ春休みだからしばらく手伝ってくれるそうです」

「へぇ…加奈ちゃんらこっち来てたん?後輩パティシエもすごいね!製菓専門学校の上級スクールってさ。卒業したらどーすんの?」
「人にもよるけどね…後輩パティシエはフランス留学したいって言ってたよ。将来的に自分のショップ持ちたいとか!」
「そうなんだ!うーん、パティシエも向上心いるんだな」
「だよぉ。美裕だって20歳〜25歳まで勉強してたよ。調理師の免許も持ってると何かと役に立つんじゃないと思って、勉強して取ったし。学生時代よりも勉強したな!若かったら体持ったんだわぁ。その当時睡眠4時間だった。今…そんなことしたら美裕すぐにグロッキーだ」

ブレンドしたコーヒーをカップに入れた美裕が、調理場奥から出てきた。
「どーぞ。これが神戸有名メーカーのアメリカンです。千尋さんおすすめ!」
俺はコーヒーの匂いも楽しみ、一口目をゆっくり口に含んだ。

「うっめぇ!これってさ…神戸のUESIMA?」
「正解!どう…オリジナルな濃さよりアメリカンとスィーツも合うと思わない?」
「うん!これ出すんだな…俺さ毎日来ていい?毎日コーヒーとスィーツ食べにくる!」
「嬉しいけど!マサ君!糖尿病なるわ。着替えてくるね!ちょっと待ってて」
美裕はドアを開けて、2階に行った。今から出かけるんだ…明日誕生日の美裕を連れて、急遽デートに誘った俺だ。31日には加奈ちゃんら来るから、30日の夕方には美裕はカフェに帰って、加奈ちゃん達を迎える準備をしたいらしい。


いいんだろうか?マサ君が私の左手の薬指にリングを指に通した。車から下りてマサ君が私の手を引っ張って連れて来たところは、ジュエリーショップだった。スタッフがマサ君の顔を見てうなづいて、すぐに奥のドアを開けた。
「俺の気持ちです。もっとはよぉ贈りたかったけど、ごめんな」
また、リングを通した時にスタッフが拍手までした。スタッフが私の顔を見てこう言った。

「MASATOさん…もぉこのリング選ぶのに、ショーケース何度も往復し、ここの在庫にはないリングもカタログ見せて!すごい意気込み」
「イメージは?どんな方?って聞いたけど、ニンマリして教えてくれませんでした。でも今日…お逢いしてわかったわ、私」
私は顔が赤くなるのがわかった。その時のマサ君の様子が目に浮かんだ。

「またぁ…想像してるんか?美裕ぉ」
「うん…ありがとうございます。マサ君の気持ち一杯詰まったリング…大事にさせて頂きます」
マサ君は嬉しそうにうなづいた。過程っていいな…私は前の結婚の時は過程なんて大事に思ってなかった。ただ結婚したかった…現実から逃げたくて!

その時だった。マサ君は私の心を見透かしたように言った。
「前の事があるから、今はそう思えるんや…俺もそうやから。な…これからはこういう節目は大事にしよう。ちゃんと2人で決めてな」
私はその言葉に目が熱くなるのがわかった。また涙が止まらなくなりそうだ…

マサ君は私の手を握り、ジャケットのポケットからハンカチを出して私の目を軽く押さえた。
「これで涙止めてくれ。あんまり泣くな…今からやで。美裕」
私はただ…うなづくしかできなかった。声を出したら…また涙が止まらなくなると思ったから。