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[マル目線(前編)]残念王子とおとぎの世界の美女たち

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「まぁ、それがいい方に解釈されて良かったよ。…外交ってこんなんでいいのかな?なんかしっくりこないんだけど…。」

すると爺や様が、穏やかに笑いながら王子の肩をぽんぽんと叩いた。

「ほっほっほっ。王子が仰る通り、今回はマルがうまく通訳した功績も大きいですからな。
やはり王子ご自身が手応えを感じるには、ご自分の考えをその国の言葉で話すことが大事でしょう。」

「…だよねー。」

ワインを飲みながら、王子が適当な相槌をうつ。

(こういう適当な相槌…父上に似ている。)

父上と王子は全てが真逆だけれど、唯一この適当な相槌をうつ飄々とした態度が似ている。

里の任務をしなくなった私は、これからは国へ帰る機会がない。

ということは、父上にも母上にもきょうだい達にも…もう会うことはできない。

思いがけず感傷に浸ってしまっていると、適当な相槌をした王子に、爺や様のとどめの一撃が笑顔で繰り出される。

「せっかくですから、これを機に外国語を学ばれたらいかがですか?」

とたんに、王子の目が泳いだ。

「あ、うーん、考えとくよ。」

(相変わらず、勉強嫌いだなぁ。)

家族を思い出して、少し寂しくなっていた私の心は王子のこの可愛い反応ですぐに癒された。

人魚姫に借りた布をたたみながら、思わずぷっとふきだした。

本当に、いつも王子に母性本能がくすぐられる、というか…愛しさが増す。

そしてこの王子の純粋さに、心が救われる。

忍は、時に人を陥れたり闇に葬ったり盗んだり…任務によっては非人道的なこともする。

常に陰に身を潜め、闇に生きる。

幼い頃よりそういう任務をこなしてきた父上は、『夫君』という陽の当たる立場になって忍として生活しなくなっても…やはり常に闇が見える人だった。

今の私も、そうかもしれない。

けれど王子のそばにいれば、その闇を明るく照らされることがわかるのだ。

放っておけばどんどん闇へと堕ちていく忍稼業…残忍な任務をこなすために人としての心を捨てる者も多く、私はいつもそのバランスをとることに苦しんできた。

そんな私が闇へ堕ちず影で留まれる、人らしく生きれる光が王子なのだ。

父上にとっては、それが母上…だからこそ、父上は私のこの気持ちを理解してくれて、里から解放してくれた。

私は爺や様と笑い合っている王子を、少し眩しく感じて目を細めて見つめた。

そんな私の耳に、警笛が聞こえる。

(あ、そろそろ海底国の領海に差し掛かる頃か。)

海底国の領海を通らせてもらうとき、警笛を鳴らして挨拶をするのが決まりなのだ。

私は洗濯をしたその布を持って、バルコニーに出た。