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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅷ

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(第七章)ブルーラグーンの資格(8)-略奪者との対決①



 八嶋は、美紗の席のほうを見やり、色のない唇を開いた。
「鈴置さんのいる『シマ』って、いつも楽しそうね」
 課業時間中に賑々しく話す直轄チームの若手たちを眺める顔は、全く楽しそうには見えなかった。美紗は、「普段は、もう少し静かなんですけど」と相槌代わりに応えながら、相手の様子をうかがった。腕を組んで立つ八嶋は、苛立っているようにも見える。渉外班への異動を打診されたらしい自分と、現在その渉外班に在籍する八嶋。彼女のほうにも、何らかの話が入っているのか……。
「直轄チームって、どう?」
「どう、って……」
「仕事、面白い?」
「……私には、少し大変で……。でも、とても勉強になります」
「今の配置、気に入ってる?」
 無遠慮な口調に気おされるように、美紗は思わず頷いた。美紗より少しだけ背の高い八嶋は、ふうん、と険のある相槌を打つと、わずかに身をかがめ、すっと顔を寄せてきた。
「そりゃそうよね。日垣1佐のすぐ下にいるんだから」
 美紗は思わず息を飲んだ。にわかに胸が苦しくなる。
「……どういう、意味ですか」
「言った通りの意味だけど? 距離が近くて、羨ましい」
「どうして、そんな……」
「鈴置さんのポストは、本当は、今年の春に新設される予定だったんだよね。話だけは二年ぐらい前から出てたから、正式にポストができたらそこに異動したいと私も思ってたんだけど……」
「八嶋さんは、直轄チームを希望されてたんですか」
「そう。日垣1佐に近いところで仕事したかったから」
 美紗は、目を見開いたまま、沈黙した。盆休みに入る少し前、エレベーターホールで日垣と話していた八嶋の姿が頭に浮かんだ。やや険悪な雰囲気で対峙していた二人。あの時、自身の頭を日垣の胸に寄せていた八嶋が彼に伝えた言葉は、何だったのか……。
「それがいきなり、予定が半年以上前倒しになって、新設ポストに情報局外の人が就くなんて。いくら予算取りの調整がついてたからって、あの異動は不自然じゃない?」
「でも……」