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「そういう経緯を話したら、吉谷女史はずいぶんと心配してくれた。彼女は大使館事情に詳しかったからね。『防駐官の妻は、それ自体が仕事のようなものだから、日本で何があっても生半なことでは帰国できない』と忠告されたよ。出国が迫る頃には、私のほうが吉谷女史にいろいろ相談していたくらいだ」
　夜の街を一望できる大きな窓に映る日垣の横顔を見ながら、美紗は、彼の話が不運な結末に終わるであろうことを予感した。