それでも太陽は赤く染まる!第19回「タイムオーバー!」
「それで、もうひとつはフロスですね。フロスの方はこんなふうに糸状に一つのケースに何センチかおさまっているもので適当な長さにきっていただいて、ようは歯間ブラシと同様歯の隙間に挿入して汚れをかきだして落としていくものですね。なので歯の隙間の虫歯になりやすい汚れはこの歯間ブラシやフロスを使用していただいて、歯や歯茎のマッサージは歯ブラシと言う感じですかね、毎食後このような感じで歯のお手入れをしていただくといいと思われます。あと先っぽがとがった隙間歯ブラシなんかもありますが、細かい所ですとやはり歯間ブラシとかの方が勇利だと私は思います。( ̄〇 ̄)最初はなかなか隙間に入らなくて面倒くさいという方もいますがなんでもそうですが、慣れですね。この後、帰りとかに薬局屋さんにでも行ってのぞいてみたらいいかもしれませんね。( ̄д ̄)」
神山、ひととおり話しがすんで一仕事終えたようなあまり気配りの感じられない横顔を沈んだ瞳のひとしに見せると最後に・・・。
神山
「とまあ、次の患者さんいらしたようなので、軽く説明させていただきましたけど、今後ですね、服部さんがどう磨かれるかによって歯の健康の人生が大きく変わってくるかと思われます。ざっとでしたが服部さんの方から何か質問とかありますか!特になければこれでおしまいにさせていただきますけど。( ̄д ̄)」
時間もだいぶ過ぎて、長々と一方的に話しを聞かされて少し緊張もほぐれたせいか、いつの間にかむすっとした表情に変わっていたひとしは思わず強い口調で・・・。
ひとし
「これ、全部わざわざ買わなきゃいけないんですか!うちの家族歯ブラシだけでこんなもの沢山使ってないですけど・・・。(♯-_-)」
神山、その言い方に神山も違和感を感じてか負けずと強い口調で言葉を返すように・・。
神山
「別に買う買わないの問題ではなくて、服部さん自信が御自分の歯をこの先一本でも清潔に長く保たせたいお気持ちがあるのであれば使った方が良いですよって事なので、他の方がどうとかなんて関係ないと思いますよ!(⊳〇⊲)ただ今の服部さんの歯の健康状態をチェックさせていただいた限りでは使った方がいいと私は思いますけど、それがもし面倒くさいのであれば先ほどもさんざん申しました通り近い将来的に年齢は若くしてお口の中だけぼろぼろのお饅頭ひとつ噛む事の出来ないしわしわなおじいちゃんのような歯になってしまいますよと申しましたけど、それは嫌ですよねって話しです。だからそれに関しては服部さんの好きに決めちゃってくれればいいですよって事なので・・・。もういいですかね、次の予約の患者さん待たせ過ぎてしまうと申し訳ないので・・・。!(⊳Д⊲)」
神山が少し嫌気をさしたように片付け始めるよう立ち上がり、強制的に話しを終わらせたかと思うと、ひとしの何も言い返してこない反応を確認してさらに・・・。
神山
「それから私からもひとこと言わさせてもらいますけど服部さん男の子なんですからもう少しはっきりと喋ってくださいね!(⊳Д⊲)ぼそぼそとしゃべってると他の方はどうか知りませんが、私はけっこうイラっとくるので。私は実家が犬山なんですけど年のはなれた弟が5人いてみんな、はきはきしてますよ!まあこれは私事で全然関係のない話しですけど。もう中学生なんでしたらなおさら、次からちゃんとお願いしますね!(⊳〇⊲)それでは先生呼んできます。」
ひとしの言葉も待たずに神山が「お願いしま~す。( ̄д ̄)」と奥に向かうと、数秒たって入れ替わるように上機嫌の院長先生がマイペースに現れた。
中野院長、無駄に笑顔を振りまくようにひとしの顔を見るや・・・。
中野院長
「お疲れさ~ん。それじゃお口の中確認するね~。イス倒すよ~。\(^o^)/」
ひとしは言われるまま魂の抜けた人形のように表情に力が入らないまま口を開ける。
中野院長
「おっ、ばっちし綺麗になったね。OK。しっかり歯ブラシの指導は聞けた!?(*´ω`*)」
ひとし、生ぬるい感触の悪いゴム手袋の指を唇に感じながら無理に作り笑いをつくると・・・。
ひとし
「は、はい・・・。(#^ω^)(人の気も知らないで。(♯-_-))」
中野院長、その言葉に満足そうにひとしのイスを起こすと・・・。
中野院長
「今日からまたしっかり磨いてね。次の定期健診で会う時、楽しみにしてるから!じゃあ、終わっていいよ・・・。気をつけて帰ってくださ~い。\(^o^)/」
先生の仏のような笑みは今のひとしの心には何の効果もなく、なんとか笑顔をつくりだして・・・。
ひとし
「ありがとうございました。(何が終わっていいんですか!人間ですか!?ていうかその性格、天然かよ!(-_-))」
すでに心に小さな怒りの熱が燃え上がり始めているのを必死にこらえてカバンを手に立ち上がるとひとしは急に我慢していた尿意がぼうこうに蘇りいそいそと治療室を後にした。
そして治療室どなりにあったトイレに飛び込むといそいで、ズボンのチャックを下ろしてシャーッとぼうこうがゆっくりとしぼんでいくのを感じながら安堵と落ち込みの混ざったため息をもらした。
だが、小便をしながら身体の力も一気に抜けて頭がボーッとしたような感覚に身を預けているのもつかの間、外のカウンターの方から「服部さ~ん、お待たせしました~。」とマイペースな神山の声にすぐに身体に緊張と幽体離脱寸前だった魂が戻り引き戻される。
ひとし
「は、は~い。Σ(゚Д゚)(なんなんだよ、まったく・・・。(♯-_-))」
ひとしは、怒り慌てながらも、急いでおしっこを全部出し切るように挟みそうになりながらチャックをあげると軽く水道で手を洗いぬれたまま勢いよくドアをあける。そして患者らしき待ち合いの角のイスで足を組みしきりにタブレットをなぶっているやり手そうな若いスーツ姿のサラリーマン男性を横目にカウンターへと突っ走って行った。
神山、走ってくるひとしを見るや不愉快そうな相変わらずな無神経な表情で・・・。
神山
「走らないでくださいね!( ̄д ̄)年配の方も見えたりするので、ぶつかって入れ歯が外に弾き飛んでけがされた方もじっさいいらっしゃるので・・・。」
ひとし、も不愉快そうに・・・。
ひとし
「はい・・・。(-_-)(いちいちうるさいな、人の事さんざんののしっておいて、説教師か!?!(⊳〇⊲))」
神山、ひとしの反応など気にせずマイペースな口調なまま視線も合わせず・・・。
神山
「保険証ありがとうございました。これ新しい診察券のカードです。なくさないようにしてくださいね。西山さ~ん、治療室へお入りください。( ̄д ̄)」
他の患者と自分をダブルに扱うような雑な口調の接し方に不快感を覚えるひとし。差し出してきた凶暴なサメが口を開けて歯並びをずらりとみせた悪趣味な診察券をひとしが「ふ~っ!」とため息交じりで壁のすでに11時まじかな時計の針と交互に眺めているとまた神山がパソコンを打ちながら話しを切り出すような口調で・・・。
神山
作品名:それでも太陽は赤く染まる!第19回「タイムオーバー!」 作家名:ワタリドリ