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ワタリドリ
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それでも太陽は赤く染まる!第19回「タイムオーバー!」

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「服部さん、それで先ほど言い忘れてしまったんですけど歯間ブラシははりがねタイプともうひとつゴムタイプのがあって、ゴムタイプの場合、先っぽは細いですけどだんだん太くなってすきまにきちんと入らない事があるので、どちかかと言えばはりがねタイプのものがおすすめですね。( ̄〇 ̄)後、服部さん歯並びもよろしくないのでなるべく細めのSSS(スリーエス)サイズがよろしいかと思います。もし買われるのであればこちらでもお売りしておりますけど・・・。( ̄д ̄)」

とカウンター越しに置かれた歯間ブラシ10本入り、580円が目に入ったが、ひとしは不満そうな顔で・・・。

ひとし
「お金あんまり持ってきてないのでいいです。(-_-)」

神山、ひとしのその反応になんの動揺もせず・・・。

神山
「まあ、お値段が気に食わないのであれば、そのへんは服部さんが自由に気に入ったお店で買っていただいていいです。( ̄〇 ̄)ただ、今流行りの100均とかだと手軽ですけど雑で毛先が荒かったりするのでこちらとしてはあまりお勧めはしません。( ̄д ̄)」

ひとしが不快感に返す言葉に困っていると、最後に神山がさっさととどめを刺すような冷めた言い方で・・・。

神山
「それではお大事にしてください!何かありましたら次は必ず電話で予約してきてくださいね。お疲れ様で~す。( ̄〇 ̄)」

パソコンからほとんど視線をこちらへ向けずそのまま不愛想に治療室へと去っていく神山に嫌気を覚えながら、ひとしは返事も返さず怒ったようにドアを乱暴に開けるとほぼ客もなくカラに近い駐輪所めがけて駆けていった。まだ4月の始めでもあり風が吹くとやはり冷たい。気分が沈んでいるとなおさら敏感に心にすきま風を感じる。

急いで自転車を引っ張り出し書道具のカバンを前かごに放り込みまたがると眉間にしわをよせて猛スピードでペダルをこいで突っ走って行く。

ひとし、心の中でたまった不満を爆発させるように・・・。

ひとし
「(ああ寒い。上着持ってこればよかったな、トースターの爆発でお姉ちゃんと逃げるように家出てきたからな。お姉ちゃんも薄着だったけど帰りとか平気かな、たぶんカバンに何か上着変わりなもの入っているだろうけど。(-_-)ていうか、そんな事より完全に習字間に合わないじゃないか!なんだよ、あの患者に向かって失礼な言い方は、歯を削る前に患者の接し方勉強してこいよ!本当頭くるな~。助手ものんきな先生にも。何がはきはき喋れだよ、こっちが気を使ってやってるのをいいことに、助手の犬山の実家の兄弟なんか関係ないっつうの。!(⊳〇⊲)神山じゃなくて犬山に苗字かえちゃえよ。神々しさのかけらもないくせに!腹立つな本当!入る時はきずかなかったけど、あんな悪趣味なサメの壁画なんかみせられたら患者逃げてくよ絶対。サメのように歯を頑丈にしましょうとかのジョーズとジョークのダジャレのつもりかもしんないけど、くっだらない!改装なんかしないでさっさとつぶれちゃえば良かったんだよヤブ歯医者が!次の定期健診までにつぶれてくれないかな。その前に二度と行くもんか!歯医者なんて他にも腐るほどあるんだから。!(⊳Д⊲)」

ひとし、なんだかんだと悪態つきながらもシャーッと広い交差点の点滅青信号をぎりぎり渡り終え、あおい町の派手な布端教会の時計がすでに10時59分の針をチラ見するとさらにイライラが増してスピードを上げペダルを漕ぐ。
あおい町と書かれた電柱にひとしはそういえばここはさやかの住んでいた町内だと思い出す。

ひとし
「ああ~~、本当行きたくないな習字なんか。(♯-_-)1時間も遅刻して!のんきに紙の上に筆なんか走らせてる気分じゃないよこりゃ~。このまま遠くまで走って消えちゃいたいよ。でも昨日そろばん休んじゃったし、今日行かなかったら先生、家に電話してくるかも知れない。こんな時にバラエティーにいろいろ教えてる塾って嫌なんだよな~。そろばんならそろばんだけ教えてればいいのに。それにやっぱりどの道習字は書いた紙をお母さんに見せるから行ったとごまかしても証拠がない。おまけにさやかと習字も一緒だなんて、あんまり合いたくないってのに!(-_-)これじゃあ昨日そろばん休んだ意味全然なかった。もう、歯医者のイライラとさやかのダブルパンチだよこれじゃあ~。ったくお姉ちゃんが歯医者なんて言わなきゃ怒りも半分ですんだのに!帰ったらひどいぞ~。あああ~~~っ!逃げ道も結局どこにもないなんて、今年は本当の厄年かもしんない!(>_<)」

ひとしは心でさんざん不満をぼやきながら一瞬両目をぎゅっとつむりハンドルをこぶしでバンバン叩いて発狂すると、勢いつけて立ち漕ぎをするように立ちあがりまた猛烈な力でペダルを漕ぎ始めた・・・。

が、その瞬間。「わあ~~っ!Σ(゚Д゚)」

「ガシャーーーーーーーーン!」

十字路の細い交差点で不意に勢いよく横切ってきた一台の自転車にぶち当たってしまい、ひとしは一瞬で思考をうばわれ時間が止まったように自転車ごと地面へと仰向けに倒れた。