遅くない、スタートライン 第2部 第2話
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「美裕ぉ…そんな赤くなるなよ。体中の血液沸騰するぞぉ。おまえ」
バスタブの中で、俺の横で顔を真っ赤にしてる美裕だ。そりゃ強硬手段に出た俺が悪いけどさ…
「ほ、ホント…あなたといると」美裕の右手がワナっていた。
「楽しいやろ?退屈せんでしょ?俺はお調子者のマサ君だし」俺は美裕の肩を抱き寄せた。
「も、もぉ…いつもそうやって!私を…ックック。でも面白いのと退屈しないのは事実だもんね」笑いだした美裕だ。
「でしょ。美裕カラかってさ、また美裕もカラかわれて楽しそうだし、俺ももちろん楽しいわ。ピュアな反応と素直なお言葉で俺をまた楽しませてくれるしさぁ。わかってくれるぅ?」俺はまたおどけながら、美裕の顔に自分の顔をつけた。
「うん…私も同じだからね。言葉ってすごいね…言って嬉しい、言われて嬉しい…反対もあるけどね」
「だろ!俺も微力ながら、言葉の良さを文章で表わしたいんだ。それで作家になったんだから」
「うん。MASATO先生の書く文章好きぃ」美裕はバスタブの中で、俺の手を握った。
風呂から上がって、美裕にはバスローブを手渡した。俺は腰にタオル巻いて…美裕が俺を見た。
「……もちろんですよ。美裕と初のお泊りだし、美裕いやなの?」美裕は顔を赤くして笑った。
「いやじゃないけど、マサ君ってホント…ッキャァ!」
俺は美裕をまたお姫様抱っこした。
「俺ノーマルっすよ。って言いたいけどさ、美裕が悪いんだ」
「な、なんで美裕が悪いん?」
「今から、ベッドで証明するから」俺は美裕が赤くなるのを見て、笑いながら足でドアを開けた。
俺の胸に顔をつけた美裕は、肩で息をしていた。俺も息が荒かったが、美裕の背中を手でなでてやった。
「大丈夫?深呼吸しなよぉ…ほら」俺は美裕の肩をタッチした。美裕は俺に言われて、深呼吸をしてやっと顔を上げた。
「まだ…ドキドキする?」俺は美裕の唇に軽くキスした。美裕は頭を何回か上下した。まだ口も利けんのか?
「ホント…美裕面白いわ。いや…魔性の女かな?ックック」俺は美裕の乳房を手で愛撫し、また乳房にキスを繰り返した。
美裕の感じる声が耳に聞こえ、俺の肩を軽く手で握った。
「覚えてる?初めての時さ…美裕ガチガチでテーブルにぶつかってコケたろ?」思い出したのか、美裕も俺の胸の中で笑っていた。
「うん。コケて起きようかと思ったけど、足も手も動かなかった」
「うん。それが事の始まりだよな?」
俺と美裕は初めて…お互いに触れた時のことを思い出した。
交際を始めて3回目のデートの時だ。美裕に見せたい資料があって、デートの帰りにマンションに寄ってもらった。もぉ結構外も寒かったから、俺は美裕を家まで車で送るつもりだった。美裕は玄関の置物でひっかけたのかタイツが伝線していた。
「あ、伝線してるぞ。タイツ」俺が見つけた。
「あぁ…やっちゃった。あ、洗面所お借りしていい?バックの中にあるんだ」
「うん。あぁ…ウォーク使って。そっちの方が広いから」
「ありがとう。お借りします」俺は奥の部屋を指さした。
タイツを履き替えて出てきた時に…リビングの入り口で美裕は何にもないところで毛躓いた。それを俺がカラかったんだ。
「不思議ぃ…何で何もないところでコケる?みぃちゃん…また替えた方がいいで。今度はひざ伝線してる」
「えぇ…うっそぉ!あぁん…もう替えがない」そりゃないだろう…
「もう生足で帰ったら?あぁ…生足で帰ってまたコケたら今度は擦り傷やな」
「そ、そんな何回もコケへんわ。私の事なんやと思うてるん?マサ君」
「イエ…すみません。だってみぃちゃんがな!面白いぐらいコケるしぃ!」
やっべ…またみぃちゃんのほっぺたが膨らんだ。俺は必死にご機嫌直す努力をした。ま、最後の方にはみぃちゃんも一緒に笑ってたが。
みぃちゃんが立ち上がる時に俺は手を貸した。みぃちゃんの手が俺の手を握った。そこからだ…俺はもうブレーキが効かなくなっていた。気がついたら、みぃちゃんを腕の中に抱いてた。みぃちゃんはビックリしてたけど、俺を拒まなかった。
「ごめん…俺もうあかんわ。今日まで我慢してたけど。みぃちゃん抱きたい」とストレートに言ってしまった。
みぃちゃんは目を見開いてたが、俺の手を握り返してくれた。
書斎横の寝室でみぃちゃんを抱いた。寝室に来るまでにまた、テーブルに足をぶつけコケたみぃちゃんだったから、俺はもうその場でみぃちゃんを抱き上げて寝室に入った。これ以上…青タン作らせたらアカンわ。この人に…体もガチガチや!俺は改めて気合を入れ直した。もうそっからは想像してください。俺の努力を!
作品名:遅くない、スタートライン 第2部 第2話 作家名:楓 美風