遅くない、スタートライン 第2部 第2話
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冬休みに入って1週間が過ぎた。明日はクリスマスイブだ!去年はまだ病院のベッドにいた私だ。病院内のクリスマスツリーを車いすに乗って見たな。看護師さんに車いす乗せられて、気分転換になるから行こうとベッドから強制連行されたわ。あの当時の私はベッドの中から動くことさえ嫌だった。今年は違うんだ…ホントあのかもめ本に出逢わなければ、今の私はいないと思った。いや…痛感させられたもん。自分がどれだけ甘ったれでわがままで、自分の事しか考えてなかったし、お姉ちゃん達にどれだけ心配かけたか。あきら先生が亡くなってから私は神戸の病院で入院していたが、神戸に来たお姉ちゃんとお兄ちゃんにその日のうちに退院させられ、入院先が決まるまでお姉ちゃんの家にいて、お兄ちゃんの知り合いの病院に1年以上入院してたんだ。体的には回復したけど、精神面ではまだ復活していなくて、お姉ちゃんとお兄ちゃんは、当初空き家だった実家を私が無理なく住めるようにリフォームしてくれた。そこで療養生活を始めた私だ。療養生活したもののまだ精神的に不安定な部分があり、寝込むこ日々もあった。お姉ちゃんがかもめ本を持ってきてくれた日から、少しずつ私は目が覚めて行った感じだ。ホント、MASATO先生のかもめ本には感謝してるし、著者のMASATO先生にも感謝している。
MASATO先生こと、マサ君にプロポーズされてから1週間が経った。あれからマサ君はタイムスケジュールを組んで行動していた。全く私と遊んでくれないわけじゃないが、休みになったらどちらかの家に入り浸りなるかと思ったのに。今日もマサ君はどっか行ってるみたいで、用事が終わったらラインをくれることになっているが、どこ行ったの?私は家の片づけにも飽きたのか、今日は朝から起きてソファに座って、スマホのゲームしたり本を読んだりして時間を潰していた。いや、する事はあるんだけどしたくない気分だった。
いつの間にか、ソファで居眠りをしていたようだ。手に握られたスマホの振動音で目が覚めた。画面を見たら、マサ君からの電話だった。
「……はい。ッハッハ…お昼寝してたみたい。うん、いいよぉ。え、なにそれ?」マサ君の電話での話は、眠っていた私の脳を起こした。
電話を切ってから、私は慌てて出かける用意をした。
「ったくぅ…いつも急なんだから!ま、いいか。行きたかったし…お姉ちゃんもお兄ちゃんもいないし。お兄ちゃんも昨日逢ったし、3日間泊まり勤務だって言ってたし、行こうと!」私は大きめのスポーツバックとリュックサックを持って玄関に出た。
マサ君の運転する車は、この前連れて行ってもらった郊外のリゾート地に向かっていた。またこの郊外のリゾート地は学校長のご友人が経営していて、本来ならこのクリスマスシーズンは、予約で一杯でキャンセル待ちもあるそうだ。それが、キャンセル待ちしてた人も都合が合わず、マサ君に連絡が入ったそうだ。車を運転しながら、マサ君は言った。
「この前は秋のシーズンに来たやろ?あの時にフロントで聞いたらもう予約で一杯でクリスマスシーズンはあかんって言われたんや。だから俺としては諦めてたから、そしたら今日の昼に電話かかってきて、美裕ぉ!スィートだぞ。それも通常料金でいいから3泊4日泊まってくれと!」
「えぇ…スィート?このシーズンだったらすごい値段でしょ?それも通常料金でいいって」
「うん、でもなまだ裏があって。俺にサイン会と講演1本してくれるなら料金は要らないと会長が言うたんや。美味しいと思いませんか?美裕さん」
「それは美味しいわぁ。で、美裕に何か手伝えと言うのね?講演の後かな?」
「よぉ…わかったね。ホテルの調理場使う許可もらったから、講演会の後の茶話会のスィーツ焼いて!」
「はいはい。作りますよ…わっかりました」美裕は了解してくれた。
作品名:遅くない、スタートライン 第2部 第2話 作家名:楓 美風