遅くない、スタートライン第2部 第1話
(5)
今日は忙しかった。スクールは冬休みに入ったけど、養成上級クラスの課題はあるわ、カフェスクールの卒業レシピ作成もあるわ、おまけに家の片づけも残っているが、マサ君が手伝ってくれたので大物は片付いたが、細かな物は私が片づけなければいけなかった。まして、お姉ちゃんはアメリカでお兄ちゃんは警察官なんで、年始も年末もあったもんじゃない。でもこの2人に聞かないと片づけられない物もあり、とにかく段ボールで分けて整理した。作業が終わったのが夕方近くだった。立ったり座ったりの繰り返しで腰も痛いし足も痛いわ。おなかも空いたけど食材がないし、困ったな。駅まで出るかな…100円ショップにも行きたいし、色々と考えた末に外出の用意をした。
「そういや…マサ君今日はどーしたんだろう?ラインもないし電話もない。年内の仕事は終わりと聞いたけど、仕事入った?」
私はテーブルの上のスマホの画面を見たが、本日マサ君から連絡もなし…ま、こういうこともあるわね。私はリュックサックを背負って部屋を出た。
バスから降りた私は、駅ビルのショッピング街に向かって歩いていた。クリスマス前とあってバーゲンセールもしていた。オンナ1人だとダメだわ。誘惑に負けて100円ショップの買い物の他に結構買い込んでしまった。これじゃベーカリーショップにも入れないわぁ。コインロッカーに預けてからじゃないと!またこの夕方ピーク時に空いてるコインロッカーもないかも。私は両手に荷物を持ってため息をついてしまった。その時だった…私と同じように両手に紙袋を抱えた男の人がため息をついていた。またため息をついたと同時に、お互いの顔を見たら…
「ま、マサ君」
「みぃちゃん!」なんと、横の男の人はマサ君だった。お互いの荷物を見て笑いだした私達だ。
「ったくぅ。5ヶ月前の再現シーンか?」
「この前はえっとぉ…で、今日はため息だよ」
「うん。まぁ運命がそうさせたんでしょ。あ、みぃちゃんマンション帰ってからメシ行こう。こんな時間にウロウロする言うことは食べてない」
「うん。1日お片付けとかしてて食材買いそびれちゃった。買い物の帰りに食べて帰ろうかと思ったけど、これじゃぁ」
「両手に荷物だ。帰ろう!俺ん家にさ」
「うん」私とマサ君は歩き出した。
マンションに帰った俺達は、玄関に荷物を置いて飯を食いに出かけた。近場でみぃちゃんが食べれそうな洋食屋をこの前見つけたんだ。メニューリストにアレルギー成分が書かれていたんだ。1度俺だけで食べに行ってメニューリストもしっかり目を通したし、そこのオーナーにも聞いたから大丈夫だ。予想通り…みぃちゃんはパスタを喜んで食べた。チキンオムライスもサラダも!俺は大盛りナポリタンとドライカレーにした。ナポリタンはみぃちゃんにも少しやった。みぃちゃんはチキンオムライスを俺にくれた。
「ここのお店入りたいと思ってたんだ。でもなかなか1人で入れなくて、マサ君ありがとう。連れてきてくれて」
「イエイエ…喜んでくださってありがとうございます。今日は何買ったん?あの大荷物たち」
お互いの買ったモノの話になり、店を出た後にコンビニスィーツ買って、俺のマンションへ帰った。
玄関に置いた荷物をリビングに運んで、お互いの買ったものを見せあい、品評しあった。
「今日はラインもないし、電話もないし。どーしたのかと思ったわ。マサ君」
「あぁ…起き抜けにな作家ダチから電話があって、俺がいつも服買ってるショップのファミリーセールがあるから行こう!って誘われてさ、その後に男だけで焼肉食って、焼肉臭い体で電車乗れんから、サウナ行って久しぶりにダチとビリヤードとダーツして遊んできたんだ。そこのサウナさ、スパもついてて」
楽しそうにしゃべる…マサ君だ。今日は休みを満喫したようでご機嫌さんだ。私はマサ君がしゃべるのを笑いながら聞いていた。
リビングのからくり時計の音楽が聞こえた。みぃちゃんが時計を見て…
「あ、もうこんな時間!私ぃ…帰るわ。遅くまでごめんね」と立ち上がったが…俺はみぃちゃんの手を引っ張った。
「良かったら…泊まらへん。もう遅いし、あの荷物でバスで帰ったらあかん。俺が明日家まで送っていくから」と…私の腕を軽く引っ張った。
明け方に目が覚めたら…横に寝ているマサ君は、気持ちよさそうに寝息を立てていた。毛布からマサ君の肩が出ていたので、手を伸ばし毛布を肩にかけた私だった。マサ君は長袖のアンダーシャツ1枚で寝ていた。私には同じ長袖のアンダーシャツと自分のパジャマを貸してくれた。マサ君に引き止められて、私はマサ君ちに泊まってしまった。引き止められた理由もわかったし、私もまだもうちょっと、マサ君といたいと思ったから…お泊りしてしまった。お姉ちゃんにバレたら怒られるわ。( 一一)
マサ君が寝返りを打った…仰向けに寝ていたのに、今度は私の方に体を寄せてきた。こんなデカイ体してるのに、丸くなって眠るマサ君がかわいく思えた。私は思わず…手でマサ君の頭をなでた。なんか…母親の気分みたい。また私も、マサ君の体温で眠りに落ちたようだ。次に目を覚ましたら、マサ君が眼鏡をかけて私の顔を見ていた。
「おはよぉ…みぃちゃん」とニッコリ笑った。
「な、何眼鏡かけて人の寝顔見てるのぉ?肌チェックでもなさってるの?MASATO先生!」
「うん。アラサー女子の素肌チェックさ!あ、みぃちゃんこの頃お肌の調子いいんでない?女性ホルモン潤って…イッデェ!!」
あ、朝から何てこと言う?私はマサ君のオシリを平手で叩いてやった。
「ご、ごめん。ごめんって言うてるやん。みぃちゃん!カラかったんちゃう!」
俺はベッドの中で、またみぃちゃんを自分の膝の上に座らせて必死こいて謝っていた。許してもらわんかったら、今後の予定がパァや!
「ふんッ!どうせ私は経験不足ですよん」横向いたみぃちゃんだ…やべーぇ!!あ、この手でどうだ。
今…俺の目の前では、美味しそうに焼きたてワッフルを食べてるみぃちゃんだ。昨日の買い物の中で、みぃちゃんが喜びそうなワッフルメーカーを買ったんだ。ワッフルメーカーの箱についてたワッフルミックスを慌てて混ぜ、焼きたてワッフルに有名メーカーのはちみつたっぷりかけて、みぃちゃんの前に差し出した俺だ。美味しそうに食べてるってことは、機嫌治った?
「お代わりどうですか?まだありますよ…それ食べたら行きたいところあるんや。お願い!ついてきて」
と私に手を合わせながら、頭を下げたマサ君だ。
作品名:遅くない、スタートライン第2部 第1話 作家名:楓 美風