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遅くない、スタートライン第2部 第1話

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(2)

食った…食った!俺はジーパンのファスナーを下したほど満腹だった。刺身に海鮮丼にビールにみぃちゃんが作った卵の吸い物もお代わりして、それでも刺身達は余ったんだ。みぃちゃんがパッキングしてフリージングした。横のみぃちゃんもお行儀悪いけどと言って、俺同様にジーパンのファスナーを下した。あの小柄なみぃちゃんが、海鮮丼をお代わりし刺身バクバク食べた。わさびとかダメだけど、大根のつまやシソの葉巻いて美味しそうに食べていた。俺も真似して食べたら、これがいけるいける!お互いに後で魚臭いじゃないかと言いながら食べた。食べてる中で、添削の話もし色んな話をした。

「良かったよ。全体的にオーソドックスなストーリーだけど、最後にビシッと締めたなと思った。聞いていい?あの構想は最近思いついたもんじゃないだろう?ずっと心に秘めてて、いつか使ってやろうかと待ってたな?」

私はまた目が泳いでしまったようだ。何でこうもマサ君こと、MASATO先生に言い当てられるのか。
「何でわかったの?って顔してますよ。樹さん」
「うん。一度書いてみたいと思った結末ですよ。自分だったらこんな事してみたいと言う願望が入ってて。何でわかったんですか?」
「結末の終わり方でその書いた人の想いがわかるんだ。ま、それも作家業して何年も経ってわかったことだけど」
「にじみ出てるってヤツ?」俺はみぃちゃんの顔を見てうなづいた。
「樹さんにしても、他の生徒にしても結末はこうでありたいと思うけど、書いてる途中で自分が考えた結末とは違う方向に作品になったりさするわけ。俺も未だにあるよぉ…作家は産みの苦しみをして作品誕生させるんだからさ。大変だよ…」
「うんうん。養成上級クラスに行ってからそれは思った。文章を書くのがこんなに難しいとは思わなかった。家のデスクで唸っちゃった」
「だろぉ!俺なんか…人様に聞かされないことつぶやいたり、わめいたりしてるで」
「聞きたいような…聞きたくないような」みぃちゃんは手に口を当ててクスクス笑った。
「聞いて俺の事…嫌いになる?」俺はみぃちゃんのほっぺたを指で軽く突っついた。
「……なるワケないでしょ」珍しく…みぃちゃんから俺の頬にキスをしてくれた。

また俺の頬にキスしたみぃちゃんも、キスされた俺も顔が赤くなったのは言うまでもない。

夕飯の後に二人で食器を洗ってた時に俺は聞いた。
「みぃちゃんから珍しい…なんでキスしてくれたの?」
「うーん。かもめ本のMASATO先生も作品書くときは苦しんで苦しんで、苦しんだからこそあんないい本ができたんだな。またMASATO先生って素直だなって思ったの。それが…かわいいなと思いました。まる」
「…ありがとうございます。みぃちゃんもかわいいよ!シャイなみぃちゃんが…ックック」
「あぁ…笑う?もうしないからね!」みぃちゃんが横向いた!やべ!!

俺は皿をカウンターに置いて、右手でみぃちゃんの肩を抱き寄せた。
「ごめん!ごめん!マジ…嬉しかった。カラかったんちゃうし!ね…ご機嫌なおして。モロゾフの生チョコにプリンお取り寄せしたから」
「も…モロゾフぅ?ッグフ」みぃちゃんのご機嫌が治ったようだ。

そのモロゾフの生チョコにプリンを食べながら、俺はみぃちゃんに話をした。
「え、さっきの話の続き?」生チョコを手に持ったみぃちゃんが俺の顔を見た。
「うん。養成上級クラスは実力のある生徒は、新人の登竜門のコンクール等に応募させてるんだ。さっきのストーリーは短編だけど、みぃちゃんが課題で書いた作品の中にこれはと思うのがあって、学校長と副校長と俺とダチ作家でどうかな?って。あ、みぃちゃんの他にも候補者はいる!誰とは言わないけど」
「……私の作品が?」まだ信じてないな…この言葉は!
「うん。俺達が監修するから、年が明けたらスクールで話しよう。以上!養成上級クラスの話はおしまい!みぃちゃん…頭切り替えて俺と遊んでくれ。明日は1日遊ぶ約束だぜ」俺はみぃちゃんの手を力を入れて握った。