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新・覇王伝__蒼剣の舞い【序章】

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          ※※※※※※※※※※
 「父上、この分だと日暮れまでに蒼国へ入れそうですね」
 笑顔で振り向く息子に、男は頷いた。
 これから、どんな危険が待っているか理解らない。笑む少年の期待が、不安に変わるのは間違いないだろう。父としての思いと、剣を持つ者の使命との間で、その心は揺れている。
 「拓海、もしかすればお前が実戦で剣を振るうのは近いかも知れん」
 「はい?」
 拓海___未だ17歳の少年の運命は、この瞬間から始まる。
 「それと___いい加減降りてこい」
 「?」
 「うわぁっ…!」
 降りてきたと云うよりも、落ちてきた人物に拓海は唖然とした。
 赤い髪に、赤い服の青年。
 「誰…」
 「酷いなぁ…狼靖さま。急に脅かすなんて」
 「人の後をこそこそついてくるのと、どっちが悪い?」
 「父上、知り合いですか?」
 「………」
 狼靖は、無言のまま歩き出した。
 「ちょっと、狼靖さま」
 「お前の相手をするなと云われている」
 「セイちゃんですね、そんな事いうのは。この朱雀を無視するなんてあの冷血漢」
 「朱雀…?」
 赤い髪を掻き上げる青年と拓海の目が合う。
 拓海を見るガーネットアイが、大きく見開かれる。
 「狼靖さまの息子?…ってセイちゃんの…」
 理由が理解らない。初対面にも関わらず、嬉しそうに肩を組んでくる。
 「あ、あの…」
 「気にしない♪気にしない♪仲良くやろう、僕、四獣聖・朱雀の焔」
 「…えええええええーーーーー」
 息子の驚きを余所に、狼靖は溜息をついた。
 早くも、拓海の期待は不安になりつつある。連れて来て果たしてよかったのか、父として些か拓海の将来が不安になった狼靖であった。
 蒼国は、四国四カ国の中で最も小さい国である。
 北は黒抄、西の白碧、南の紅華と列強の国と接し、王となった男は七年前まで自由戦士という異色の存在である。
 「これはこれは、野育ちの蒼王陛下自らお出ましか?」
 嫌味たっぷりに男は、数人の仲間と共に嘲笑う。
 「悪かったな。そっちこそ、腹黒王に振り回されて気の毒なこった」
 舌戦では負けていない男の応酬に、黒抄軍は剣を抜いた。
 「これでは和議どころじゃありませんね、清雅さま」
 「星宿、俺は和議なんざするつもりはねぇよ」
 見事な龍を剣の柄に施した剣を握り締め、清雅は飛躍した。