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新・覇王伝__蒼剣の舞い【序章】

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          ※※※※※※※※※※
 「___義兄上は、今も手こずっているようだね?せっかく情報を教えてあげたのに、小国相手に何を手間取っているのやら」
 金縁の鏡を膝に抱き、男の美声が薄暗い室内に響く。
 「義兄上に任せたのが間違いか?ま、未だ利用価値はありそうだが」
 クククと笑みながら、男は鏡面を撫でた。
 「こちらも急がなくてはな」
 金色の長い髪を翻し、男は視線をそこへ向けた。
 金の柱に囲まれた、紅い大きな石。
 「…躯ヲ…探セ…ドラゴンノ…転生…ガ成サレタ」
 「ドラゴンの転生だと?」
 「覇王トナル…ドラゴンノ…」
 紅い石は数度光って、再び静寂に包まれる。
 「理解ったぞ。お前が目覚めたのはそれか?」
 髪と同じ金色の双眸が、細められていく。その背後には、無言で立つ男が一人。
 「吾は____白王さまの為にどのような事も厭いません。必ずや御手に蒼剣を」
 「ふふ、期待しているよ」
 白い頭巾を深く被り、男は部屋を出て行った。
 
 前覇王の死は、突然だった。
 病死か、毒殺か、あまりにも突然すぎた為に当時は騒然となった。これにより、覇王家の崩壊は始まる。
 嫡男・黒狼に対する反発により、先ず貴族たちが謀反を起こし、他の二人について国を興した。反発を広げた決定的なものは、覇王家から消えた蒼剣の行方である。
 ____蒼剣は、覇王となる者を自らの意思で選ぶ。
 いつしかそんな噂となった。
 蒼剣は自ら、覇王家を去った。黒狼は次期覇王に非ず。
 反発者の声は自尊心が高い黒狼を憤らせ、力で認めさせようと今も戦いを挑んでくる。 「___ええぃ…、たかが蒼国に何をしているのだ?」
 「黒王陛下、向こうには四獣聖がついておりまする」
 「ふん、未だいたのか?とっくに解散したと思っていたが」
 「四獣聖は、亡き前覇王陛下の精鋭」
 「たかが三人ではないか?覇王たる吾に従う者など、覇王の精鋭ではないわ」
 「白碧、紅華の動きも気になります」
 「ふ、我が黒抄の勢いに恐れをなして身動きできぬようだな」
 だが、黒狼は未だこの時は知らなかった。蒼剣が、再びこの世に現れるのを。さらに、それぞれの運命が大きく動く事を。